2021/12/25
政府は新型コロナウイルスの影響を受ける非正規労働者ら10万人を対象に、求人の多い業種への転職を支援する。派遣会社が研修を実施し、派遣先企業で試験的に働いてもらったうえで就職を促す。国が研修費用を負担し、派遣先企業にも奨励金を支払う。コロナで打撃を受ける宿泊・飲食業界などで働くパートや派遣労働者らがIT(情報技術)などの成長分野に移りやすくする。
(日本経済新聞 11月16日)
労働力が余っている分野から労働力が不足している成長分野へ労働力の円滑な移行を促進することはマクロ経済政策としては重要だ。そのために必要な学び直し、即ち、リスキニングを国が支援することにも一定の合理性がある。
ただ、宿泊・飲食業界は、既に、労働力に余剰がある状態を脱している。各地の緊急事態宣言は解除され、宿泊・飲食業界は通常の営業体制に戻ってきた。むしろ、求人を増やしてもパートやアルバイトが戻ってこないことが悩みとなっている。政府の転職支援策が宿泊・飲食業界の人手不足を助長しかねない。
また、宿泊・飲食業界のパートがリスキニングによってIT技術者になれるかどうかも定かではない。国が研修費を負担して研修を実施する派遣会社と国が奨励金を支給する派遣先企業は利益を得るかもしれないが、実際に転職する非正規社員の数は限定的だ。結局、国費を関連業界にばらまくだけで、非正規社員の転職という政策目的は達成されないことが危惧される。政策の実効性と投資対効果を向上させるには、転職した人数に応じて、研修費の補助金や採用の奨励金を支給するなど、成功報酬を前提とした制度に改めるべきだ。
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