2020/10/25
欧米でデジタル人材を育てるリカレント教育(再教育)への公的支援が広がっている。新型コロナウイルスで世界的に雇用不安が広がるなか、失業リスクが高い産業からニーズが拡大するデジタル分野へ雇用シフトを進められるかがコロナ禍後の成長に直結する。産官学連携が乏しく、再教育で欧米に遅れる日本にとって喫緊の課題だ。
欧米が再教育支援を急ぐのは、コロナ禍で雇用ニーズの変化が加速しているためだ。もともと人間の作業が人工知能(AI)やロボットに置き換わるデジタル化の流れが進んでおり、雇用のシフトが進んでいた。そこにコロナ禍が発生し、営業制限を迫られた外食などサービス業で人員過剰を生んだ。
(日本経済新聞 9月22日)
コロナ禍によって飲食店や観光施設で余剰となった人員をAI技術者に職種転換するのは難しいかもしれない。リカレント教育に力を入れたとしても、あまりに求められる素養が違う分野への転職には無理がある。
ただ、デジタル分野で必要とされるデジタル人材は、第一線で活躍するAI技術者だけではない。ITを開発する人だけでなく、ITを使いこなす人も必要なのだ。そして、多くの場合、後者の人材の方が必要とされる人数は多い。
飲食店でマニュアルどおりの単純作業に従事していた非正規雇用の人でも、AIを始めとする最新技術を知ることで、ITを活用した新たなアイデアを発想することは珍しくない。そうした発想力の開発は、本人の雇用機会を広げる。また、多様な発想力を取り込むことは、デジタル分野の進化にもつながる。
コロナ禍の長期化に伴って、日本の産業構造は不可逆的な変化を起こしている。afterコロナの時代になってもbeforeコロナの状況には戻らない。日本の行政も、既存の雇用の維持だけでなく、新たな分野への雇用のシフトに力を入れるべきだ。
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