2017/01/04
電通の女性新入社員が過労自殺した問題で、厚生労働省東京労働局は28日、社員に違法な残業をさせていたとして、労働基準法違反の疑いで法人としての同社と幹部1人を書類送検した。違法な長時間労働が常態化しているとみられる同社の労働実態の全容を解明するため、他の幹部の関与などを含め引き続き捜査する。
過労自殺で亡くなった高橋まつりさん(当時24)は、9月30日に三田労働基準監督署から労災認定を受けた。これを踏まえ、東京労働局などは10月、東京本社や3支社などに対して「臨検監督」と呼ぶ任意の立ち入り調査を行った。
その結果、複数の部署で労使協定の上限を超える違法残業の疑いが浮上した。東京労働局は11月に強制捜査に切り替え、押収した社員の勤務関連の資料を分析した。社員の出入りを記録する「入退館記録」と会社への申告が大幅に食い違う事例が判明した。(日本経済新聞電子版12月28日)
残業時間は記録や関係者の証言によって証明することが比較的容易なため、違法性を立証することも難しくはない。しかし、従業員が自殺する原因のすべてを明らかにすることは、それほど簡単ではない。
今回の電通の過労自殺の件では、長時間残業がその原因のひとつであったことに疑いの余地はない。ただ、一般には、長時間残業以外の原因で従業員が自殺に追い込まれるケースが少なくない。特に、単純労働ではなく、創造力を必要とする業務に従事する、どちらかと言えば、世間的にはエリートと目されている人たちに多い。
違法な長時間労働を撲滅することは重要だ。しかし、心のケアも含めて、企業も社会も人を育てる意識を高めることが、日本社会全体にとって、より重要な喫緊の課題だ。
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