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「日本は賃上げ指標導入を」IMF提言

国際通貨基金(IMF)は28日まとめた経済政策提言で、日本に継続的な賃金引き上げを促す官民ガイドラインの導入を求めた。日本の低インフレ・低成長は賃金の伸び悩みが一因と指摘し、全体的に賃金水準を押し上げる必要があるとした。財政悪化にも懸念を示し、段階的な消費税の増税も促した。
IMFは金融政策、財政政策、構造改革では不十分だと指摘。「所得政策」を加えるべきだと提言した。賃上げは個人消費を刺激するだけでなく、労働コストの上昇で物価水準も押し上げるため、日銀が目指す物価上昇率2%の目標達成を後押しできるとみる。
(日本経済新聞 9月29日)

失業率が低い割には賃金の伸びが鈍いことが、日本の低インフレ・低成長の一因であることは確かだ。しかし、一方では、低インフレ・低成長であることが賃金停滞の原因でもある。賃金と景気は相互に影響しあっている。
したがって、通常、政府と中央銀行は、金融・財政政策によって、金融緩和と需要創造を行い、景気を刺激することによって、雇用の増加と賃金の上昇を促す。これに対して、IMFの今回の政策提言は、日本の場合、これらの政策だけでは不十分で、所得を直接増加させる政策も発動することを求めている。

IMFの提言は合理的にも思えるが、所得政策でデフレから脱却し、経済を成長させるのは意外に難しい。たとえば、確かに賃金は物価に影響を与えるものの、円高や資源価格下落のような物価押し下げ要因の方がはるかに影響は大きい。また、グローバル経済下では、賃金の上昇は海外への需要の流出につながり、国内の供給と雇用が減少して国内経済の縮小をもたらす可能性もある。居酒屋のアルバイトの時給が上昇しても居酒屋は海外移転しないが、自動車部品メーカーの派遣従業員の時給が上昇して部品価格が上がれば、自動車メーカーは海外の部品メーカーから安価な部品を調達するだろう。結局、部品メーカーは仕事と雇用を失うことになりかねない。

IMFが提言する「継続的な賃金引き上げを促す官民ガイドライン」を導入するなら、一律に最低賃金を引き上げるというやり方ではなく、地域や業種・業務の特性に応じたきめ細やかなガイドラインにする必要がある。

谷萩 祐之

著者情報:
谷萩 祐之

1958年生まれ、早稲田大学理工学部数学科卒。富士通株式会社でソフトウェア事業、マルチメディア事業、グローバル事業、コンサルティング事業を担当した後、現在、谷萩ビジネスコンサルティング代表。経営コンサルティングの傍ら、雑誌等で執筆活動を続ける。著書:「Webが変わる プッシュ型インターネット技術入門 」

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