2015/10/30
東芝がソニーと売却に向けて大詰めの交渉に入っている大分工場(大分市)の画像用半導体事業について、工場全体の人員のうち約4割に相当する最大1100人をソニーに転籍させる方向で協議していることが26日、分かった。東芝はシステムLSI(大規模集積回路)など半導体事業の一部や白物家電などを課題事業と位置付け構造改革の具体策作りに乗り出している。
東芝は大分工場で手掛ける画像用半導体「CMOS(相補性金属酸化膜半導体)センサー」の製造設備をソニーに売却する方向で協議している。
転籍については今後、最大1100人の対象者に方針を伝え意向を確認する。東芝は構造改革に伴う余剰人員が発生しても、売却先への転籍や半導体事業内、もしくはグループ全体での配置転換などを主体として早期優遇退職などは最小限にとどめたい考えだ。
(日本経済新聞電子版 10月27日)
不適切な会計処理で揺れる東芝が、リストラを加速させている。半導体部門は、室町社長の出身母体だ。大企業の経営者にとって、自分の出身部門の力を削ぐことは、社内の政治力学上、不利になるため、できればやりたくないこと。そこを自ら率先して実行してみせて、白物家電やパソコンなど構造的な問題を抱える事業のリストラに踏み込むつもりのようだ。
もっとも、東芝の半導体事業の中では、システムLSIは、開発費がかさむ割には売上が小さく、収益性の低い事業だった。かつては、東芝自身がシステムLSIのビッグユーザーだったが、家電を縮小した今では、外販に頼らなければ事業規模を維持できない。特に、CMOSセンサーのシェアは低く、他社との競争は厳しい。大きなシェアを持つソニーに売却するのは合理的な判断だ。
今回のCMOSセンサー事業の売却に伴って、東芝が集積してきたノウハウの離散が心配されていたが、ソニーへの転籍などにより、東芝の従業員にその能力を発揮できる場が確保されることは喜ばしい。東芝の半導体事業には、東芝よりも先に半導体事業のリストラに踏み切った企業の技術者も集まっている。それらのノウハウを活かさなければ、半導体産業全体にとっての損失だ。
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