日産栃木工場は期間従業員を、生産ラインの統率を担う現場監督に昇格させる新制度を導入する。通常、現場監督を担う30代半ばから40歳前後の従業員が少ないことに対応する。人材不足が懸念される中、期間従業員から正社員登用する人員数を従来の倍となる年15人程度に増やし、優秀な人材の囲い込みにつなげる。
従来は期間工の正社員登用制度はあったものの、現場監督にまで引き上げる仕組みはなかった。現場監督の適齢期となる人員が1990年代後半の景気低迷の時期と重なって少ない一方、定年を控えたベテラン従業員が多い「年齢別の人口構成がいびつな状態」(橋本工場長)だった。新制度を導入することで従業員の年齢構成の平準化を狙う。
(日本経済新聞地方版10月15日)
日産に限らず、多くの日本の大企業はバブル崩壊後の90年代に正社員の新卒採用を絞り、その後の景気拡大局面では、契約社員などの非正規労働者を雇用して労働力を確保してきた。その結果、30代半ばから40歳前後の中堅層が薄くなっている。
製造現場の現場監督には、現場経験に基づく作業のノウハウと管理能力の両方が求められる。人材の不足を管理能力はあるが現場経験の少ない他部門の正社員で補充するのは難しい。むしろ、現場経験豊かな期間従業員から管理能力のある人材を選抜して現場監督に抜擢し、正社員として教育する方が現実的だ。
多くの製造業が海外へ製造拠点を移転する中で、なお一定の国内生産力を維持する自動車産業だからこそできる施策ではあるが、正社員、期間工の枠を超えて人材の適材適所を目指す人事のあり方は、今後、他の企業へも波及するだろう。
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