富士通は半導体生産から撤退する方針を固めた。主力の三重工場(桑名市)を台湾の半導体受託生産世界3位の聯華電子(UMC)に、会津若松工場(福島県会津若松市)を米社にそれぞれ段階的に売却する。投資負担が重く業績がぶれやすい半導体事業を大幅に縮小、クラウドなどIT(情報技術)サービスに集中する。かつて世界上位を占めた日本の半導体産業は構造変化への対応が遅れた。苦戦する中、10年以上続いた再編は富士通の生産撤退で一区切りがつく。
富士通の2014年3月期の半導体事業の売上高は3216億円。業界内では両工場の資産価値は500億円程度との見方がある。製造部門の売却で商社部門を除く半導体関連事業は、スーパーコンピューター向け演算用半導体といった自社向け開発などごく一部に限られ、売上高は100億円規模になる見通し。
(日本経済新聞7月18日)
富士通が半導体生産から撤退することを決め、日本の半導体産業の再編は東芝だけが残ることで決着することとなった。市場は富士通の判断を好意的に受け止め、富士通の株価は上昇した。
しかし、富士通の撤退をもって日本の半導体産業の再編が完了したということは、見方を変えれば、半導体の構造改革では富士通が一番遅れたということでもある。
実際、富士通が半導体部門を売却する機会は、今までに何度もあった。たとえば、東芝との売却交渉はマスコミでも話題になっていたが結局決断できないまま時が流れ、時機を逸した。もし、もっと早い時期に東芝へ売却していれば、富士通にとっても東芝にとっても利益は大きく、日本の半導体産業全体にとってもプラスだっただろう。
富士通に限らず日本の電機産業は、事業再編の決断が遅れて傷口を大きくし、追いつめられてから不利な事業売却に出るという行動を繰り返してきた。そして、未だに、大企業同士の合併にまでは踏み込んでいない。都市銀行が合併を繰り返してメガバンクが誕生した金融業界とは対照的だ。今では、メガバンクの数よりメガバンク向けのITシステムを提供するベンダーの方が多い。
日本の電機産業がグローバル競争の中で産業として生き残るためには、大企業同士の合併による規模の拡大は避けられない。
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