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ヤマダ電機46店閉店、都市部に注力

家電量販最大手のヤマダ電機は、全国約1千の直営店のうち46店を5月末までに閉店する。改装して業態を変える店もあるが、4~5月の2カ月間で、地方や郊外にある不採算店を中心に一斉に閉鎖する。これまでの拡大路線を転換し、東京・八重洲など都市部の大型店や免税専門店といった収益力の高い店づくりに注力する。

閉店するのは、テックランドNew江東潮見店(東京都江東区)、同名古屋南丹後通り店(名古屋市)、同枚方店(大阪府枚方市)、同新南陽店(山口県周南市)など。従業員は近くの店などで継続して雇用する。
いっぽう、2015年度は新たに15店を出店する計画だ。JR東京駅前に都市型の店舗を年内につくるほか、アウトレットや訪日外国人のニーズが高い免税専門店などへの業態転換を進め、収益力を高めたい考えだ。

ヤマダはこれまで積極的な新規出店戦略で、店舗を全都道府県に広げてきた。売上高は11年3月期に2兆1532億円に達したが、15年3月期は1兆6643億円と大きく減らした。今月には、ソフトバンクとの資本・業務提携を発表。調達した資金を店舗の改修や改装にあてるほか、情報通信技術を生かして太陽光発電や蓄電の機能を売りにしたスマートハウス事業にも乗り出す方針だ。
(朝日新聞 5月24日)

消費税増税以降、家電量販店はいずれも苦戦を強いられている。ヤマダ電機だけでなく、エディオンやケーズホールディングズの決算も厳しい。目玉商品となる新製品が乏しいことに加え、ネット通販が台頭し、家電量販店市場全体が停滞している。業績が好調なのは、中国系資本が買収し、中国人観光客の集客に成功しているラオックスぐらいだ。

ヤマダ電機も外国人観光客のインバウンド消費を取り込もうと郊外店を閉店し、東京駅八重洲口など都市部に出店する。新橋店は既に改装し、中国語の表示を増やして、銀座に集まる中国人の爆買い需要の獲得に動き始めた。八重洲口の新店舗は、外国人向けの品揃えとサービスのさらなる充実を図ることになるだろう。

人口密度の低い郊外店ではネット通販に対する競争優位を維持しにくい。一方、日本の有名店で買うことに価値を見出し、短期間の滞在中に爆買いをする訪日客に対しては、今後とも競争力を確保できる。郊外店を閉店して大都市のインバウンド消費を狙った出店を加速させるのは合理的な判断だ。

ヤマダ電機は、閉店する店舗の従業員は配置転換するなどして雇用は確保する方針だが、新たに出店する店舗の従業員には、外国人観光客に対する質の高いサービスが要求される。

谷萩 祐之

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谷萩 祐之

1958年生まれ、早稲田大学理工学部数学科卒。富士通株式会社でソフトウェア事業、マルチメディア事業、グローバル事業、コンサルティング事業を担当した後、現在、谷萩ビジネスコンサルティング代表。経営コンサルティングの傍ら、雑誌等で執筆活動を続ける。著書:「Webが変わる プッシュ型インターネット技術入門 」

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