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シャープ赤字2223億円、国内3500人を削減

シャープ

経営再建中のシャープは14日、2015年3月期連結決算の税引き後利益が2223億円の赤字(前期は115億円の黒字)だったと発表した。
国内従業員3500人の削減や大阪本社の売却などを盛り込んだ経営再建策も同時に発表。主力取引銀行2行から計2000億円の金融支援を受け、17年3月期の黒字回復を目指す。
今年2月時点では300億円の赤字を予想していた。主力の液晶パネルの販売失速や、太陽光パネル事業の不振を踏まえた損失処理が膨らんだ。本業のもうけを示す営業利益も、500億円の黒字予想から480億円の赤字(同1085億円の黒字)となった。
これにより、シャープの自己資本比率は3月末で1・5%(前年同期は8・9%)に落ち込んだ。単独ベースでは、資産を全部売っても借金を返せない「債務超過」に陥る。このため6月末に、みずほ銀行と三菱東京UFJ銀行からの借入金の一部計2000億円を、議決権のない株式に転換し、債務を減らす。
同時に発表した再建計画では、7月下旬に国内で3500人の希望退職を募る。海外での削減も含め、全従業員の約1割を減らす。生産体制の見直しも行い、四つある福山工場(広島県)を1か所に集約する。大阪市の本社も売却する。経営責任として、代表取締役5人のうち、高橋興三社長を除く4人が6月23日付で代表権を返上する。
今年10月に液晶や太陽光発電など事業部門ごとに五つの社内カンパニーを発足させ、経費管理などを徹底する。主力の液晶は、将来的な分社化も視野に入れる。
(読売新聞 5月15日)

シャープは14日に発表した中期経営計画で、社内カンパニー制の導入や人員削減などによって業績を改善させ、3年後の18年3月には、2兆8千億円の売上を3兆円にするとしている。しかし、具体的な成長戦略が描けない中、その実現は厳しい。

主力事業としてきた液晶は市場価格の下落によって、収益を確保することが難しくなっている。技術的な優位性は今なお維持しているが、その技術的優位性だけでは、自社製品に充分な競争力を与えることができなくなった。その結果、技術を他社に提供することで生き残りを図る他ないところまできている。

その技術も、全従業員の1割が退職し、研究開発投資も限定的な中で、将来に渡って優位性を維持し続けるのは難しいだろう。今回発足する5つの社内カンパニーをいずれ分社化し、他社との事業統合などを含めた業界再編によって活路を見出すことになるのかもしれない。

シャープの創業者、早川徳次は、「誠意と創意」の二意に専心すべしという言葉を遺した。「創意」は、技術的なイノベーションを起こすためだけに必要なのではない。経営にも企業のあり方にも必要だ。シャープが営々と培ってきた「誠意と創意」のDNAを活かし、それを将来に渡って育てる場所は、シャープという企業の内側だけにあるわけでもない。シャープが、今直面する苦境をばねに、企業の枠を越えた業界全体での経営資源の最適化に乗り出すならば、それは、日本の電機産業全体に新たな成長戦略を与える契機となるだろう。

谷萩 祐之

著者情報:
谷萩 祐之

1958年生まれ、早稲田大学理工学部数学科卒。富士通株式会社でソフトウェア事業、マルチメディア事業、グローバル事業、コンサルティング事業を担当した後、現在、谷萩ビジネスコンサルティング代表。経営コンサルティングの傍ら、雑誌等で執筆活動を続ける。著書:「Webが変わる プッシュ型インターネット技術入門 」

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