甘利明経済再生相は24日、閣議後の会見で、非正規雇用の賃上げが昨年を上回る可能性があるとの見方を示し、賃上げの広がりを好感した。一方で、経済の好循環を確実にするために、政労使会議を近く開催し、引き続き賃上げの拡大などを要請すると語った。
現時点での非正規の賃上げについて「昨年は12円、今年は20円で、このまま最終回答までいくと昨年をかなり上回る」と見通した。さらに「安倍内閣になって、非正規・正規、男性・女性の賃金格差が縮小しつつある」とし「良い傾向だ」と語った。
そのうえで、景気回復の好循環を中小企業に波及させるために政労使会議を近々開き、「賃上げ拡大、下請け代金の改善などに向けての努力を引き続き要請することになるだろう」と語った。
政府が春闘に未来永劫関与することは好ましくないとしながらも、現時点では「今年、来年、その先もずっと賃上げが景気の好循環を後押ししていくサイクルに入れるよう環境整備していく」と語った。
<株高は日本経済への期待の表れ、「もや」が取れつつある>
2万円の大台乗せも視野に入る最近の株高の背景については「日本経済への期待」の表れだとした。「日本経済が回復基調にあり、次第に先のもやが取れつつあることへの市場の期待だ」と述べた。
過熱感があるかとの質問にはコメントを控えた。(ロイター 3月24日)
一般に、非正規雇用の賃金は、正規雇用の賃金に比べて景気動向に影響されやすい。景気後退期には、非正規雇用から先に賃下げや解雇が行われるが、景気回復期に入ると、逆に、賃上げや雇用増が顕著となる。労働集約的な産業である建設や外食などの業界では、この傾向は顕著だ。
したがって、消費税増税の影響が一巡し、日本経済が緩やかな回復基調にある中では、正規・非正規の賃金格差が縮小に向かうのは自然なことではある。さらに、今年の春闘では正社員のベースアップが相次いでおり、非正規雇用の賃上げが昨年を超えるのは確実だろう。
一方、中小企業への賃上げの波及は、非正規雇用の賃上げに比べると、ややハードルが高い。
大企業の賃上げの原資の一部は、海外事業で稼いだ収益であったりする。トヨタのように、今なお国内工場で製造した製品の一定量を輸出している企業は別だが、多くの大企業では、海外事業と国内事業との関係は希薄になっているため、海外事業の収益を国内事業の取引先である日本の中小企業に分配する動機が乏しい。
景気回復の好循環を中小企業に波及させるには、政労使会議で議論するだけでなく、中小企業自身がそれぞれの特長を活かしてグローバル市場の中で競争力を持ち、そこから収益を上げられるような環境を整えることが重要だ。
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