あおぞら銀行は今春から55歳以降の行員でも成果に応じて給料が上がる新しい人事制度を導入する。これまでは役員以外の行員は55歳を迎えると昇給がなくなり、給料がそれまでの7割程度に下がっていた。第一線で長く働いた行員を活用して人手不足を解消する。バブル期やその直前に入社した行員の大量離職に備えた施策で、他の銀行でも同様の取り組みが広がる可能性がある。
新制度の対象は役員ではない55歳から59歳の行員で、現在は40人強在籍している。今後数年で3倍から4倍に膨らむ可能性があるという。
銀行員は途中で退社する人を除けば、一定年齢を過ぎると大半は関連会社や取引先に出向する。あおぞら銀の場合は出向できる関連会社や取引先が少なく、行内での人材活用策を模索していた。
新制度ではまず各部門がシニア行員を活用したい職務や役割を示し、公募する。担当部署が選考し、合格すれば異動となる。新しい職務の成果に応じて等級が上がり、給料も上がる。これまでは役員とならずに55歳を過ぎた人は処遇が変わり、賞与水準が下がる。新制度では以前と同じように賞与を受け取れる。今月から募集を始める。
(日本経済新聞2月12日)
銀行業界ではシニアになる前に取引先に出向する人が多い。取引先も銀行との取引関係の円滑化のために歓迎する。
しかし、1998年に経営破綻した日本債券信用銀行を母体とし、金融法人との取引が多く事業法人に直接融資するケースが少ないあおぞら銀行としては、シニア行員の行内での活用が課題だった。
年齢が上がれば自動的に地位が上がり処遇が良くなる年功序列制には不合理な面があるが、同様に、ある年齢になると一律に収入が下がるというのも不合理だ。本来、処遇は、年齢だけでなく、業績や能力によって決めるべきものだ。行内でシニア行員の活躍の場を広く求め、年齢に関係なく適材適所を進めて人材活用を最適化することは、銀行にとっても行員にとっても、そして株主にとっても望ましい。
今回のあおぞら銀行が導入するシニア人事制度は、銀行業界としては珍しい事例かもしれない。また、米国投資ファンドのサーベラスが株主から去り、日債銀プロパー中心の経営体制ができたという、あおぞら銀行の特殊事情が関係しているのかもしれない。しかし、バブル期に大量採用した従業員が50代になっていく多くの企業は同様の課題を持っている。これらの企業にとって、今後、あおぞら銀行の人事制度は参考になるだろう。
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