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ホワイトカラー・エグゼンプション、IT技術者も対象

ホワイトカラー・エグゼンプション

厚生労働省は時間ではなく成果に賃金を払う「ホワイトカラー・エグゼンプション」の対象にシステムエンジニアなどIT技術者や投資銀行員を加える検討に入った。これまで議論してきた株式ディーラーなどから対象を拡大する。メリハリのきいた柔軟な働き方を広げ、国際的にみて低い労働生産性を引き上げる。
厚労省が16日の労働政策審議会(厚労相の諮問機関)の分科会で案を示す。月内に取りまとめて、1月召集の通常国会に労働基準法の改正案を出す。1075万円以上とする年収基準や、対象の職種を省令で示す。
厚労省はこれまで株式・債券のディーラーやアナリスト、製薬会社などの研究開発職を想定していた。それ以外に、システムエンジニアやコンサルタント、企業の資金調達やM&A(合併・買収)に助言する投資銀行の担当者、金融商品の開発担当者を新たに加える。審議会では経済団体がさらに拡大を求める可能性もある。
ホワイトカラー・エグゼンプションの導入には、(1)本人の同意、(2)年収1075万円以上、(3)職務の範囲が明確――という3つの条件を満たすことが前提だ。仕事の範囲がはっきりしていれば働き過ぎを防ぎやすい。高収入の専門職は転職の機会も多いとされる。(日本経済新聞1月16日付)

大手IT企業では、既に10年以上前から一定レベル以上のIT技術者に対して労働時間ではなく成果で年収を決める成果主義の賃金体系を適用しているが、ホワイトカラー・エグゼンプションの対象となれば、その動きは業界全体で加速するだろう。

システムエンジニアの費用は、「人月」、つまり、何人が何か月稼働したかで表されることが多い。作業時間で費用が計算されるのだが、実際には、その成果は作業時間だけでなく、技術者の能力にも依存する。優れたシステムエンジニアの生産性は、平均値の2倍にも10倍にもなることがある。したがって、システムエンジニアに時間ではなく成果で賃金を払うのは合理的と言える。

ただ、IT業界は顧客と約束した納期に追われ長時間労働が常態化している業界でもある。残業手当が出ないことは、無駄な残業を抑制する点では効果があるが、一方で、無償の長時間労働を強いる可能性も生む。賃金を決めるためではなくても、IT技術者の心身の健康を保つためにも労働時間の把握は続けるべきだ。

谷萩 祐之

著者情報:
谷萩 祐之

1958年生まれ、早稲田大学理工学部数学科卒。富士通株式会社でソフトウェア事業、マルチメディア事業、グローバル事業、コンサルティング事業を担当した後、現在、谷萩ビジネスコンサルティング代表。経営コンサルティングの傍ら、雑誌等で執筆活動を続ける。著書:「Webが変わる プッシュ型インターネット技術入門 」

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