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後継者の不在、52%で過去最低

帝国データバンクが発表した全国「後継者不在率」動向調査(2024年)によると、後継者がいない企業の割合は52.1%だった。調査を始めた11年以降で最低となった。地域の金融機関やスタートアップによる支援サービスが増えたほか、M&A(合併・買収)などによる事業承継が広がった。
22年10月~24年10月の期間を対象に、全国の約27万社の後継者や事業承継の動向について分析した。
後継者不在率は7年連続で低下した。帝国データは「官民の相談窓口が全国に普及し、(中小企業の代表者などに)事業承継の重要性が浸透した」と分析する。
すべての業種で過去最低となった。最も低かったのは「運輸・通信業」(47・2%)だった。最も高かった「建設業」(59・3%)は前年から1・2ポイント改善し、初めて全業種で60%を割った。
代表者の就任経緯(速報値)を見ると、親族ではない役員をなどを登用した「内部昇格」が過去最低の36・4%となった。買収などの「M&Aほか」(20・5%)も前年比率が上昇するなど、親族にとらわれない事業承継の傾向が強まっている。
(日本経済新聞 12月4日)

M&Aによる事業承継が進めば、黒字なのに後継者不在で廃業する事態を回避できる。従業員も取引先も窮状を免れるが、懸念されるのはM&A仲介会社が玉石混交であることだ。
テレビで報道された事例だが、訪問介護事業所の運営会社社長が還暦を迎えることを理由に事業承継を考え、中小企業庁が各都道府県で運営する事業承継・引継ぎ支援センターに相談したところ、M&A仲介会社を紹介された。その仲介者に紹介された介護事業者に会社を売却したのだが、現預金を接待交際費に使われてしまい、社長は自腹で従業員の給与を支払わざるを得なかった。接待交際費を使った場所はキャバクラで、目的は取引先の接待と説明されたという。
好ましからざる買い手企業につかまってしまったのだが、センターに紹介された仲介会社なら信用するだろうし、そこに紹介された買い手企業だから信用して売却したのだろう。
買い手企業は論外だが、センターと仲介会社にも紹介責任があるだろう。たとえ法的な責任はなくとも、センターは信頼のある買い手を紹介してくれる仲介会社なのか、仲介会社は真っ当な買い手なのか。いずれも精査したうえで紹介しなければ、売却希望者は食いものにされるだけだ。
M&A仲介会社を見分けるポイントのひとつは、仲介するだけではなく、成約後の経営統合をフォローする会社であること。代表的なフォロー策は「100日プラン」で、100日を費やして経営統合をフォローするプログラムを実施するのだが、たんに売り手と買い手をつなぐだけの仲介会社では対応できない。
事業承継・引継ぎ支援センターは、せめて100日プランを自社で実施できる仲介会社を紹介してほしいものだ。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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