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看護師ら“ボーナス大幅カット”で「大量離職」の危機?

日本労働組合総連合会(連合)の「年末一時金(第1回)回答集計結果」(11月7日発表)によると、組合員の平均額は昨年同時期の79万3542円を上回る82万7478円。一方、医療・介護従事者は、その額を大きく下回っている。
年末一時金回答の説明にあたった医労連の米沢哲書記長によると、559の加盟組合のうちの200組合から回答があり、正職員については、昨年の平均額の支給実績52万7047円に対し、今年は42万8164円で9万8884円減。「大幅なマイナスの状況となっている」(同書記長)。 200組合のうち、前年からの引き下げは83組合、10万円以上の引き下げはおよそ1割の19組合。都道府県別では東京、北海道、長野が大きな引き下げとなっており、中には東京で約26万円ものマイナス回答も出ているという。
全産業平均のおよそ半分となる見込みの年末一時金。国民の健康と命を守る医療・介護・福祉に従事する者にとって、あまりに冷ややかな対応と言えるだろう。
 こうした厳しい状況に米沢書記長は、「労働者の生活に当然、直接的に影響を及ぼすが、(診療の質の低下など)患者、利用者に及ぼす影響もある」と語り、ある懸念を示した。それは一時金削減により生活が苦しくなった従事者の“大量離職”だ。
(弁護士JPニュース 11月29日)

 看護師に賃上げについては労働組合だけでなく、職能団体も動き出した。最大手の職能団体である日本看護協会(会員 75 万人)は、10 月 28 日に福岡資麿厚生労働相に、11 月 6 日に加藤勝信財務相にそれぞれ「医療機関、訪問看護事業所等への緊急財政支援に関する要望書」を提出した。
 要望事項は「良質な医療・看護を継続的に提供するため医療機関、訪問看護事業所等の支援として、補助金支給等の財政措置を講じられたい」「 特に、看護師をはじめとする医療従事者の処遇改善のための補助金支給を実現されたい」。
 日看協は「令和 6 年度診療報酬改定でベースアップ評価料が新設されたもののプラス2.3%分にすぎず、また、訪問看護事業所においても、訪問看護ベースアップ評価料が新設されたものの、賃上げに取り組みたくとも原資が追い付かない状況」と主張する。令和6年度診療報酬改定は賃上げ改定ともいわれたが、それでも他産業の賃上げ率に比べて看護師の賃上げ率はおしなべて低いようだ。
しかし次回の診療報酬改定は2年後である。日看協はその間の補助を措置してほしいと要望した。
 しかし目下、政府が取り組んでいる賃上げ策は、控除額の引き上げによる手取り額のアップや、在職老齢年金制度改正による年金受給者の収入アップなどである。看護師の処遇改善は診療報酬改定で実施済みという考えなのかどうか。財源確保も課題である。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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