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積水ハウス、転職者など6割が復職対象に 人材を確保

積水ハウスは28日、退職した元社員の最大6割が復職対象となる制度改正を実施すると発表した。従来の制度では50歳未満の社員に限定したり、転職など自己都合での退職者を対象外にしたりしていたため、3割程度にとどまっていた。復職制度を充実させてアルムナイ(卒業生)のつなぎとめを狙う。
12月1日に「ウェルカムホーム制度」を始める。定年退職者を除く65歳未満の社員を対象として、退職後に復職登録できるようにする。登録者には求人情報などが共有される。
2006年に開始した旧制度で登録できたのは50歳未満で、退職前の1年間の出勤率が80%以上などの制限があった。さらに登録期間が8年に限定されており、それを超えると登録が解除される仕組みだった。
今回の制度改定で、定年を迎えたり懲戒処分を受けたりした社員を除いて退職者のうち最大6割が復職登録できるようになると見込む。転職者が増えるなか、復職しやすい環境を整えることで優秀な人材の確保につなげる。
専用サイトも12月2日に開設する。復職希望者はサイトを通じて登録する。積水ハウスが紹介する求人情報を閲覧できるほか、求人への応募も可能になる。
(日本経済新聞 11月28日)

昔から中小企業では退職者の再入社は珍しくなかった。退職したのち転職先で能力を発揮できていないとか、転職先がブラック企業だったとか、さまざまな事情でキャリアが頓挫している元社員で、在籍中に一定以上の評価を得ていた人に対して、社長や元上司が「戻っておいでよ」と声をかけていた。
あえて復職制度を設けなくとも、ミスマッチを回避する中途採用の手段として、元社員の採用は柔軟に行われていた。いまでも散見されるようだ。
この採用手段の制度化が普及している背景には、ミスマッチ回避だけではなく、他流試合で培った知見の獲得もあるだろう。副業解禁に他社の知見の導入を期待していることに近い。
アルムナイ採用は行政機関も実施するようになり、千葉県は退職後10年以内のアルムナイを対象に「職員再採用選考(復職制度)」を、スタート。東京都は「都庁版アルムナイ採用制度」を運用している。
経済産業省が2022年に発表した「人的資本経営の実現に向けた検討会 報告書 ~人材版伊藤レポート2.0~」は、経営人材の選抜方法について「自社で一時期活躍した人材は、自社の企業文化や 事業運営のポリシー等を一定程度理解しているため、仮に復帰した場合に、 自社経験のないキャリア採用人材よりも成果を出しやすい」アルムナイ採用を提言した。
それにしても積水ハウスが元社員の最大6割が復職対象となる制度改正を実施することは、よほど元社員の実力を評価しているのだろう。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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