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「自爆営業」はパワハラ、厚生労働省が防止法指針に明記へ…企業へ対策促す

厚生労働省は、ノルマ達成などのため、社員らに自社製品の購入を強いる「自爆営業」の防止に乗り出す。強要された結果、自殺する人も出ており、労働施策総合推進法(パワハラ防止法)に基づく指針に、パワハラに該当すると明記することで企業に対策を促す。
 自爆営業は、会社側がノルマを達成できない社員に自腹で契約を結ばせたり、不要な商品の購入を強要したりする行為をいう。農協職員が共済の掛け金を支払う、自動車販売店の社員が値引き分を負担するといった例は、後を絶たない。
 愛知県内では金融機関で働く30歳代の男性が、ノルマが設定されていた預金額を増やすため、家族から借金を余儀なくされるなどして自殺。遺族が起こした訴訟で、名古屋高裁は9月、過大なノルマや上司の叱責(しっせき)による自爆営業が自殺原因の一つだと認定した。
 パワハラは、▽優越的な関係を背景とした言動▽業務上必要かつ相当な範囲を超える▽労働者の就業環境を害する――の3要素を満たせば認定される。自爆営業についても、上司らに不要な商品の購入を繰り返し要求されるなどの実態を踏まえ、個別にパワハラと認められたケースはあった。
(読売新聞オンライン 11月24日)

自爆営業は会社が給料を巻き上げるような行為である。自爆営業の指摘を受けると、多くの会社は「自社商品を購入せよと指示したことはない。売上目標を達成せよと指示しただけだ」と開き直るものだ。しかし、これは虚言である。社員には(目標未達なのだから自腹を切って穴埋めせよ)という無言の圧力がかかり、追いつめられた社員に選択肢は残されていない。
さらに目標達成への暗黙の了解として自爆営業が横行していれば、たとえ目標を達成していても、より高い成績を上げるために自爆営業には走る例も珍しくない。
本来、自爆営業を禁じたうえで目標達成を指示すればよいのだが、自爆営業が横行しているような会社は、そんな分別を持ち合わせていない。社長も見て見ぬフリをしているだけだ。しかも自爆営業は売上目標達成の手段にとどまらず、会社への忠誠心を見分ける踏み絵としても乱用されている。
 この悪弊はかなり強硬な手段を用いないと撲滅できない。国がガイドラインを策定するという程度の措置では実行力を持たない。パワハラではなく違法行為として罰則規定が不可欠である。罰則規定が運用されない限り、悪弊の染みついた会社は変わらない。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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