2024/11/01
働きながら親族の介護をする人が増え、各党は衆院選の公約に支援の充実を掲げる。団塊の世代が75歳以上になり始め、職場を支える中高年が仕事と介護の両立に悩むケースは多い。「介護離職」が年間10万人に上る長寿社会の課題とどう向き合うか。有権者は負担軽減につながる政策と働きやすい環境づくりを求める。
(中略)
人事コンサルティング会社のマネジャーを務める女性(47)は2年ほど前から都内の自宅で認知症や持病のある父親(82)の介護をしている。目を離さないよう近くにテレワーク用の机を置き、パソコンを持ったままトイレの介助をすることもある。
仕事に出かけるためには公的な介護保険だけでは足りず、保険外のサービスを利用せざるを得ない。出費は月40万円ほど。「収入のほとんどが介護費用に消える。貯蓄を考える余裕がない」。女性は経済的な負担の軽減を訴える。
(日本経済新聞 10月23日)
この記事に「仕事に出かけるためには公的な介護保険だけでは足りず、保険外のサービスを利用せざるを得ない」と書かれているが、在宅介護を支える公的介護保険サービスにも暗雲が立ち込めている。
東京商工リサーチの調査によると、介護事業者(老人福祉・介護事業)の倒産が止まらず、10月には年間最多を更新する見込みとなった。2024年度上半期(4-9月)の倒産件数は前年同期比66.6%増の95件。2022年度上半期の73件)を大幅に上回った。
とくに倒産が増えたのは訪問介護(46件)である。「人手不足やコスト増、報酬の引き下げ改定など、介護業界を取り巻く経営環境は厳しく、先行きが見通せない企業の脱落が相次ぎ、記録的な増加が続いている」という。
今年4月の介護報酬改定で訪問介護の報酬単価は2・27%大幅に引き下げられた。報酬改定の根拠にされる介護事業経営実態調査で、訪問介護の収支差率(介護サービスの収入額 - 介護サービスの支出額)は7・8%と介護サービス全体平均2・4%を大きく上回ったので「儲かっている」と判断され、引き下げられたのである。
実態調査は無作為に抽出した介護事業者に調査票を送付して回答を収集する方式だが、事業者の過半を占める中小事業者は調査票に記入する手間を取れず、経営の窮状が調査に反映されなかったことが推察できる。
報酬単価の引き下げを受けて、訪問介護事業者の廃業・倒産は今後さらに増えそうだ。仕事を介護の両立問題はなかなか解決しそうにない。
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