2024/11/29
厚生労働省は、一定の収入がある65歳以上の高齢者の厚生年金を減額する「在職老齢年金制度」の対象を縮小する方向で調整に入った。
現在は賃金と年金の合計が月50万円(2024年度基準額)を超えると年金額を減らす仕組みだが、基準額を62万円や71万円に引き上げる案を軸に検討する。
働きながら年金を受け取れる高齢者を増やし、企業の人手不足の解消につなげる狙い。政府内や与野党間の協議を経て来年の通常国会に提出する年金制度改革の関連法案に盛り込む。
22年度末時点で、働きながら年金を受け取る高齢者は約308万人。このうち約50万人が当時の基準額(47万円)を超えていた。減らされた年金の総額は約4500億円に上る。
高齢者の働く意欲が阻害されないよう、基準額を引き上げる必要があると判断した。制度を廃止する案もあるが、支給額が膨らみ年金財政への影響が大きいことから慎重論が強い。
厚労省はまた、現役世代の高所得者が納める厚生年金保険料の上限引き上げも検討する。保険料を計算する基礎となる「標準報酬月額」の上限を現在の65万円から、75万円か79万円に引き上げる方向だ。年金財政の安定につながる一方、高所得者が将来受け取る年金額も増える。
(時事通信 11月20日)
65歳で再雇用を終えて以降も働き続ける人が増え、現役世代の上限を70歳に設定する時代が足音高く迫っている。
2024(令和6)年版高齢社会白書」によれば、65~69歳の就業率は2023年に52.0%で、10年前と比較して13.3ポイント上昇した。この年齢層の平均年収は「2023(令和5)年賃金構造基本統計調査」によれば323万7600円、月収換算で26万9800円。公的年金の平均受給額は月15万円程度だから、この年齢層は合わせて約42万円の収入を得ているようだ。
年金受給額が15万円の場合、「50万円の壁」によって、賃金が35万円を超えると年金が減額されてしまうので、月収27万円の人が年金の減額を避けるには、あと8万円分の労働しか残されていない。
月50万円の収入なら年間600万円。上場企業の平均年収よりもやや少ない水準である。この金額が多いか少ないかは生活状況や金銭感覚で見解が分かれるだろうが、就労意欲の旺盛な人にとっては物足りないだろう。
この年齢になっても年収1000万円以上を得ている人に聞くと「年金はもらっていないが、年金をもらうために仕事を減らすつもりはない。長年収めてきた年金を回収できないのは損といえば損だが、そういう発想をもって働いていない」と話した。現役世代のときと変わっていないのだ。
年金受給の条件に収入の壁を設けると、働き控えという自主規制をつづけるうちに思考の枠が縮んでしまう。働き控えという機会損失だけでなく、思考への影響も視野に入れたい。
Talk Geniusとは-
ヘッドハンティング会社のジーニアスが提供する人と会社と組織を考えるニュースマガジンです。