Talk Genius

人と会社と組織を考えるニュースマガジン

介護業界で賃上げ相次ぐ ALSOK系、月平均5.3%増

介護現場で賃上げの動きが広がっている。綜合警備保障(ALSOK)傘下で介護事業を手掛けるALSOK介護(さいたま市)は10月から正社員の給与水準を月額1万5100円引き上げた。SOMPOケア(東京・品川)やベネッセスタイルケア(東京・新宿)も賃上げを発表。介護業界の平均年収は2022年時点で392万円と全産業平均の496万円と比べて低い。賃金引き上げで人材確保を急ぐ。
ALSOK介護の賃上げは正社員約1800人が対象で、定期昇給と合わせると月額平均で5・3%の賃上げとなる。2023年4月にもベースアップ(ベア)と定期昇給合わせて5500円の賃上げをしており2年連続で賃上げを実施した。賃上げに加え、ケアマネジャーの公休を増やすほか、パート職員には夜勤の手当ても増額する。
他の産業と比べると介護業界全体の平均年収は低い。厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、全産業平均の年収は496万円(22年)。介護職の労働組合(UAゼンセン日本介護クラフトユニオン(NCCU))」の賃金実態調査報告書によると、介護業界の平均年収は2022年時点で395万円だった。
(日本経済新聞 11月5日)

 この記事で紹介されたALSOK介護、SOMPOケア、ベネッセスタイルケアは、いわば介護業界の勝ち組である。記事にある賃上げができるのも、それだけの財力があるからで、多くの介護事業者はこの3社のようにはいかない。

全国老人保健施設協会など介護分野の9団体が2060件(8761事業所分)を対象に実施した調査によると、正社員の今年度の賃上げ額は平均6098円だった。前年度の平均4600円の約1.3倍だが、賃上げ率は2.52%で、ベースアップによる賃上げ率は1.36%にすぎなかった。
今年4月の診療報酬改定と介護報酬改定はいずれも賃上げ実現の原資を確保する改定だったが、他産業に比べて賃上げ率が低いことが問題児されている。次の改定は、診療報酬は2年後、介護報酬は3年後で、それまでに処遇改善策が講じられない限り、賃上げの原資を確保できない。
この現状を踏まえて、医療三単共闘会議(全国大学高等教職員組合、日本自治体労働組合総連合、日本医療労働組合連合会)はさる11月1日付けで、厚生労働大臣宛に賃上げと人員配置像を求める要望書を提出した。要望事項は①医療と介護の現場で働くすべてのケア労働者に対して、全額公費による追加の賃上げ支援策を実施すること②物価高騰と人件費増を補えるだけの診療報酬と介護報酬を引き上げる臨時改定を実施すること――この2つである。
しかし、賃上げに焦点を絞った報酬改定を実施したばかりだから、おそらく次期改定の宿題にされるのではないだろうか。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

この著者の記事を全て見る

Talk Geniusとは-

ヘッドハンティング会社のジーニアスが提供する人と会社と組織を考えるニュースマガジンです。