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「東大から霞が関のエリートコース」は過去に 東大生の官僚離れ進む

東京大学から霞が関へ。これが典型的なエリートコースだったのは過去のこと。そんな現実が近づきつつある。  
人事院によると、2024年度春に実施した、キャリア官僚採用の前提となる国家公務員試験(総合職)の合格者1953人のうち東大出身は189人。12年度に現在の試験制度となって以降、過去最少だった。14年度春の試験に合格した東大出身者438人から10年で半分以下まで落ち込んでいる。東大生はなぜ官僚を目指さなくなったのか。
「学歴よりも社会に出てからの実力が重要だという認識が広がるほど、中央官庁は就職先として選ばれにくくなります」  
こう話すのは元労働省(現厚生労働省)キャリアで神戸学院大学教授の中野雅至さん(60)だ。
 東大生の官僚離れが顕在化したこの10年。「先行き不透明な時代」と言われ、東大生に限らずコスパやタイパを重視する若い世代が台頭した。彼らが優先するのは「どの組織に属するか」よりも「どういうスキルを得られるか」だ。
「東大を出たという学歴だけで通用するほど甘くない時代だと分かっている東大生は、実力勝負の社会で生き抜くため、より短期間で自分が望むスキルを身に付けられるポジション=就職先を選び取ろうとします」(中野さん)
(AERAdot.10月12日)

 国家公務員の職場環境がブラックで、公共に資するという志をかなえることは絵空事に近く、20代の離職者が増えている実態は広く知られている。国家公務員として働く大学の先輩に体験を聞く機会もあるはずだ
 そのうえで、なぜ国家公務員をめざすのだろうか。人事院は2023年4月に採用された国家公務員総合職にアンケート調査を実施した(有効回答699人)。
 やはり志望動機は「公共のために仕事ができる」が最多で、上位には「仕事にやりがいがある」「スケールの大きい仕事ができる」が挙がった。一方、給与水準には問題を感じているようで、公務の魅力が向上し、優秀な人材の獲得につながる取り組みとして「給与水準の引上げ」を挙げた人が8割を超えた。
国家公務員の給与水準はけっして低くないが、国家公務員採用総合職試験以外で内定を受けた民間企業の企業規模は「1000人以上」が約8割。この規模の企業と比べれば給与水準は見劣りするので、割に合わないと思うのも仕方がない。
これは時代の反映だが、省庁に採用されて早くも転職を考えている人もいる。「若いうちに転職・転身を考えたい」と「条件が合えばいつでも転職・転身を考えたい」を合わせると1割強。この層は何を目的に国家公務員になったのか。早期の転職を考えているのならば、国家公務員としてどんなスキルを身につけたいのか、省庁出身という経歴を転職市場で高く売りたいのか。確とした思惑があるのだろう。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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