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サービス残業、時給上がらず…ハローワーク募集内容と待遇に差

 ハローワークで提供される求人情報と実際の待遇が異なり、トラブルになるケースが相次いでいる。ハローワークの求人票を巡る相談は2022年度、全国で4千件に迫った。職業安定法は、虚偽の雇用条件を示して募集する行為を禁じてはいるものの、違法行為に当たるかどうかは見極めが難しく、求人情報の内容はあくまで「見込み」とする判例もあって対応が難しいようだ。職を探す人々は不満を募らせている。  
福岡県内のアルバイトの男性(48)は昨年秋、上司の言葉に耳を疑った。  
「時給アップ? いや、聞いてないよ」  
入社前に見た求人票は、2カ月の試用期間後に時給を上げると明記していた。面接でもそう言われた。しかし、入社して試用期間が過ぎても時給は変わらない。上司に問うと、求人情報とは違う答えが返ってきたのだ。月の手取りは18万円台で家計はぎりぎり。男性は漏らす。「どの会社も同じなんですね…」  
高校卒業後、生計を立てるため20社前後を転々とした。多くは非正規雇用。求人情報と実際の待遇が違う悔しさを何度も味わった。
(西日本新聞 10月7日)

職業安定法65条9号に「虚偽の広告をなし、又は虚偽の条件を提示して、職業紹介、労働者の募集、募集情報等提供若しくは労働者の供給を行い、又はこれらに従事したとき」に対して「6月以下の懲役又は30万円以下の罰金」と記載されている。
しかし、この法令が実効性をもっていれば、募集内容をめぐる虚偽問題は頻発しないはずだ。空文化は否めない。
ハローワークは、求人の内容が実際と違っていた場合に「ハローワーク求人ホットライン」に申し出れば、事実を確認のうえ、求人会社に是正指導を行うと表明している。たとえば「面接に行ったら、求人票より低い賃金を提示された」「求人票と違う仕事の内容だった」「正社員と聞いて応募したのに、非正規雇用の形態だった」「採用の直前に、求人票にはなかった勤務地を提示された」「始業の30分前に出社するように言われた」――などの相違である。
なぜ求人会社は正しい情報を求人票に記入しないのか。買い手市場の時代には求職者の足元を見て「代わりは見つかるから相違がバレてもよい」と強気に出て、売り手市場の時代には「バレてでも採用しなければならない」と焦りが出るのだろうか。倫理の欠如には違いないが、会社の本心を聞いてみたい。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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