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社員の副業促進へ企業負担を軽減 政府、労働時間管理ルール緩和

政府は会社員が副業に取り組みやすくするため、労働分野のルールを見直す。副業先も含めた労働時間全体を本業の会社が細かく管理する必要をなくす。競合他社での副業を認める範囲も指針で明示する。本業先の企業にとって副業・兼業を容認するハードルになっている要因を減らして個人の自由な働き方を後押しする。
会社員の副業には「雇用型」と「業務委託型」がある。雇用型は副業先と短時間の正社員契約やパート契約を結んで働く。業務委託契約は食事の配達員が典型で個人事業主扱いになる。通算管理ルールの廃止は雇用型で働く会社員が対象になる。
労働基準法は労働者保護のため複数の職場で働く人の労働時間を通算することを定めている。企業は通算の労働時間が1日8時間・週40時間を超えると割増賃金を払う必要がある。
企業にとっては本業・副業の労働時間の管理は労働者の自己申告に依拠せざるを得ず、実態把握は難しい。割増賃金の計算は日・週単位の計算が必要で、副業先との分担割合のすり合わせも必要だった。(日本経済新聞 9月20日)

勤務先は副業で得た知見のフィードバックを求めるなど積極的に副業を推奨している会社もあるだろうが、あくまで副業は自己裁量で行う労働である。割増賃金を勤務先と副業先とのすり合わせする手間がどうであれ、通算の労働時間が1日8時間・週40時間を超えると割増賃金を払う法令は、原則として本業のみに適用すればよい。
労働時間管理も本人に委ねるのが妥当だろう。労働時間管理の目的は健康管理だが、任意で行う副業なのだから、その管理は自己責任に帰してもよいのではないのか。
 一方、副業の現状を見ると、解禁している会社が増え、副業の意向を持つ社員も増えているが、副業に従事している社員はさほど増えていないという。ある調査会社は副業を解禁しているうえにテレワークを導入し、出勤日は月1~2日。社員は身分が保証されたフリーランサーのような立場ではないのか。そう社員に尋ねたら、こんな答えが返ってきた。
「アウトプットのノルマが毎週設定されているので、それをクリヤするのに手一杯。確かに行動を監視されているわけではないので、フリーランサーのような働き方をできるのかもしれないが、副業の時間が取れない。休日なら副業に充てられるが、子供もいるし、そこまで無理をするつもりはない」
 長時間労働の是正で労働機関の短縮が進んでいても、副業時間を確保できる会社員はまだまだ限られているようだ。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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