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残業代未払い8億円超を分割支給へ 宮城・大崎市民病院が方針一転

宮城県大崎市の大崎市民病院が医師や看護師ら1千人超に時間外勤務手当を適正に支給していなかった問題で、病院は3日、未払いとなっている8億円超について今後、分割して支払う方針を明らかにした。これまでは経営状況を理由に未払い分は支払えないとしていたが、方針を一転した。
 3日の市議会民生常任委員会で、並木健二・病院事業管理者が「是正勧告を受けた時間外勤務手当の支給については、病院の経営状況を踏まえながらできるだけ早急に支給していく」と述べた。今年度中に未払い分の一部を支給し、その後も継続して支給するという。
 大崎市民病院をめぐっては、古川労働基準監督署が昨年2月、時間外勤務手当を適正に支給していないとして是正を勧告。時間外勤務手当を算出する際、本来は基礎賃金に必要な手当を含めて計算するが、病院は一部の手当を含めていなかった。時間外労働時間の過少申告も発覚した。
 病院によると、是正勧告による未払いの総額は2020年3月以降で約10・5億円に上った。病院はこのうち約2・3億円を支給したものの、経営状況が悪いとして残りの8億円超は支給を見送っていた。
(朝日新聞デジタル 9月3日)

 予想されていた事案だが、今年4月にスタートした医師の働き方改革によって、過去の未払い残業代が闇に葬られず、支払わざるを得ない状況になった。同時に残業時間の削減も一気に進めなければならなくなったが、現状はどうなのだろうか。
「外保連ニュース」(発行・外科系学会社会保険委員会連合)に掲載された新潟大学医歯学総合病院・冨田善彦病院長の報告によると、同院で月当たり超過勤務が 100 時間越えをした医師数は、4月は4名、5月は1名、6月は1名 。富田氏は「今のところ関連病院への診療応援についても、特段の支障をきたしているとの情報は入っておらず、救急患者の診療も搬送時 間の極度の延長や、問い合わせ回数の増加は見られていないで、まずまずの滑り出しかと思う」と取り組みを評価している。
 その一方で、課題も挙げた。各病院への公共交通機関によるアクセスは現在でも脆弱なうえに、ドライバー等の働き方改革の影響も相まって、事実上、医師自身の自家用車以外では通勤が困難であることも少なくない。しかも冬期には雪道等の悪路を医師が自ら運転して診療応援に赴かねばならず、ときとして通常の 2~3 倍の通勤時間を要するので、予断を許さない。
 残業代の支払い、労働時間の削減のほかにも働き方には根深い問題が潜んでいる。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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