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介護人材の離職超過、ひとまず解消 昨年は2.4%の入職超過=厚労省最新調査

厚生労働省は27日、2023年の「雇用動向調査」の結果を公表した。
 それによると、昨年の介護・福祉分野の入職超過率は2.4%。前年の▲1.6%から改善し、2年ぶりにプラスへ戻った。
介護・福祉分野をめぐっては、昨年に公表された2022年の「雇用動向調査」の結果が関係者に衝撃を与えた経緯がある。
入職超過率が初めてマイナスに転落。離職した人数が新たに働き始めた人数を上回る「離職超過」に陥り、事業所・施設からの人材流出が進んでいる実態が浮き彫りになった。
今回の最新の調査結果は、さしあたり昨年に限っては「離職超過」の状況が解消されたことを意味する。医療分野も含めた「医療・福祉」の入職超過率は1.4%だった。他産業で賃上げが進むなか、個々の分野の枠を超えた人材確保の競争が一段と激しくなっており、今後の動向は予断を許さない。
(介護ニュースJoint 8月27日)

 介護人材が不足している理由に挙げられるのは、もっぱら賃金水準である。今年4月の介護報酬改定でも介護関連の各団体が結集して、厚生労働省に賃上げ原資の確保を主目的にプラス改定を要望した。その結果、処遇改善加算など賃上げ原資に充当する予算が組まれたが、人手不足の理由は賃金水準よりも、むしろ職場の人間関係にあるようだ。
 たとえば介護労働安定センターの令和5年度「介護労働実態調査」を確認してみたい。
事業所の従業員の採用が上手くいっている理由としては、「職場の人間関係がよいこと」 (62.7%)が最も多く、続いて「残業が少ない、有給休暇をとりやすい、シフトがきつくないこと」(57.3%)、 「仕事と家庭(育児・介護)の両立の支援を充実させていること」(47.9%)、「仕事の魅力や やりがいがあること」(38.3%)、「事業所・施設の設備・環境が働きやすいこと」(33.4%)という結果だった。
採用が上手くいっている理由の上位5つに賃金が入っていない。
一方、「離職率は低下(定着率は上昇)傾向にある」と回答した事業所のなかで、最も多かった理由は、「職場の人間関係がよくなったため」(63.6%)が最も多かった。ただ、業界団体などは人手不足の理由に人間関係を挙げても「自分たちの問題ではないのか」と突き返されるのは必至で、賃金に的を絞る以外にないだろう。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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