2024/09/06
医師らに労使協定(36協定)を超える時間外労働をさせたり、職員に割増賃金などを支払っていなかったりしたとして、地方独立行政法人・静岡市立静岡病院に対し、静岡労働基準監督署が是正勧告を出したことが分かった。病院は勧告に基づいて改善報告を労基署に提出。協定を見直し、調査が済んだ職員に対しては追加の賃金も支払ったという。
病院によると、昨年11月の労基署の調査で労働基準法の違反事例が見つかった。労使協定では、医師については「1カ月の休日労働は2日以内」としていたが、これを超えて働かせていた。
また、看護師など医師以外の医療職は「月45時間以上の時間外労働は年4回まで」と労使で定めていたが、これ以上働かせていたケースがあった。
同病院では毎年2月、1年ごとに労使協定を結んでおり、勧告を受けて協定を見直した。医師については休日労働を5日以内に変更し、日曜日を基本の休日として、土日どちらかを休むよう指導しているという。病院の担当者は「認識不足があり、所属長や職員に対し説明会を開いたり、通知を出したりして周知を行った」としている。
(朝日新聞デジタル 8月28日)
労働基準監督署は病院に対してどんどん踏み込んでゆうだろうが、働き方改革に現場医師はどんな意見を持っているのか。外科系学会社会保険委員会連合(外保連)が6月17日に都内で開いた会合で、労働基準監督署に是正勧告を受けた静岡市立病院と同じエリアにある静岡県立総合病院(718床)の現況が報告された。
同院で働いている医師は333人。働き方改革がもたらす良い点について「お金より時間を大切にする考え方が増えている」「宿日直明けに漫然と業務を続けることへの抑制」「ホワイトな職場を作ったため、若い医師が集まる」「病院が働き方改革達成を認めてくれるようになった」と述べている。
一方、働き方改革がもたらす課題に「 時間外の仕事に制限がある人が多く、仕事量に偏りが生じる」「時間外労働と自己研鑽の判断がますますグレー になっていく」「外科系や時間外が多い部署の希望者が減っている」「 事務や他のメディカルスタッフの業務増加 」を挙げている。
こうした課題を受けて、前静岡県立総合病院長の小西靖彦順天堂大学特任教授はこう指摘した。
「若い外科医は、技能と態度を極めてプロフェッショナルになろうとする気持ちが 強く、上長の指示などに拠ることなく、職場でも職場外でも自己研鑽をしている。働き方改革は、若手外科医の育成にマイナスに働く」
ただ、この指摘は労働基準法とは別の問題である。どのように労働基準法に折り合いをつけるか。しばらく模索がつづきそうである。
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