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支店長・部長、若手が逆指導 東京海上日動、職場づくり参画

 東京海上日動火災保険は10月から、若手社員が直接関わりのない支店長や部長に逆指導する「リバースメンター」制度を始める。仕事への疑問や業務改善の意見をぶつけて日ごろの職場づくりに参画してもらい、新しいアイデアなどを生みやすい環境をつくる。
若手社員が役員や幹部社員の先生役になるリバースメンター制度は、資生堂や三菱マテリアル、一部の銀行などで導入が進んでいる。若手の問題意識や感性を吸い上げ、イノベーションが生まれやすい土台づくりに役立てているという。
 東京海上日動は第1弾として、35歳以下の社員から先生役を募り、相対する上司を24年度の新任部長・支店長から選ぶ。これまで若手社員が他部署の部店長と直接話す機会は少なかった。
 世代間の距離を近づけ、年次や経験にとらわれない意見を組織運営に生かせるようにする。
 マッチングは、まず新任部長・支店長が自身の経歴や話してみたいテーマをまとめた自己紹介を社内の掲示板で共有する。それをみて若手社員が上司を選ぶが、直属の上司や過去に接点のあった人物は選べない。事務局が応募理由などを踏まえて、最終的ン決める。
(日本経済新聞 8月20日)

 経営判断はともかく、いまや現場の業務判断は上意下達一辺倒では的を外しやすい。若手社員の思考や行動の特性を把握しておなかいと組織を機動的に運営できない。
たとえば「LNEで連絡を入れるときに文末にマルを付けるのは圧迫行為である」とか「電話をかけるのは緊急時のみで、平時はメールやLINEで連絡してほしい」という若年層の心性に背くと求心力に支障が出るだろうが、こうした心性は対面で説明を受けないと理解できない。さらに業種によっては消費接点に立つ若手社員が、定性的な情報を豊富に入手していることが多く、幹部の考えを是正できることもあり得る。
いずれもリバースメンタリングによって幹部は若手から学べるケースだ。要は情報収集である。
日本能率協会マネジメントセンターは、リバースメンター制度の導入ステップについて①目的を設定する②人選③目的の共有④オリエンテーション⑤関係部署から同意を得る⑥フォローアップ――と説明している。
ただ「教えることは学ぶこと」という定理を身につけている上司には、リバースメンター制度は不要かもしれない。いや、むしろ制度を活用して、さらに深く若年層の理解に努めるのではないだろうか。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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