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副業人材は「社長の右腕」自社ブランド育成や経営計画作成

企業に勤めながら他社の仕事を請け負う副業人材を、戦力として活用する中小企業が増えている。政府が2018年に副業容認を打ち出した当初は補助的な作業が多かったが、新規事業の立ち上げなど基幹業務に広がる。副業の意欲を持つ人材は多く、中小企業の成長への手助けになる可能性を秘める。
「ブランドとして確立するには外部のノウハウが欠かせなかった」。店舗の陳列什器(じゅうき)やオフィスの棚を手掛ける摂津金属工業(大阪府東大阪市)の田中啓司社長は副業人材に助けを求めた背景を、こう振り返る。
 下請け体質からの脱却を目指して、17年に独自の家具の製造・販売を始めた。消毒液スタンドなど数種類にとどまり、本格進出には品ぞろえを増やす必要があった。だが社内の開発チームから出てくるアイデアはキャンプ用品、釣り用品、出前に使う岡持ちなど、ばらばらだった。
 3人採用した副業人材の1人、大手電子部品メーカーで新規事業の立案を担当する嶋田一歩さんからの助言は、ブランドビジョンの策定。それをもとに「強みであるパイプ加工技術を生かし、独自のものづくりを提供する」という骨格を固めた結果、椅子などのインテリア中心に開発の焦点が固まった。
(日本経済新聞 8月15日)

 中小企業の間で、コンサルタントの役割を期待して副業人材を起用する動きが顕著になってきたようだ。副業人材は実務の現役だけに現在進行中のノウハウを導入できるという期待があるのだろう。
 すでに紹介サイトはいろいろと運営されているが、そこに金融機関や自治体がコーディネーターとして参画しはじめた。副業人材の活用に関心をもっていない企業にも関心を喚起して、一気に活用が広がってゆくのではないだろか。
 たとえば副業マッチングプラットフォーム「Skill Shift」みらいワークスは、65銀行、39信用金庫、3信用組合、2政策金融機関に加えて8県1府、56市町村と連携し、副業人材活用事業を推進している。
 みらいワークスによると、大企業における副業解禁にともない、首都圏高度人材の地方企業での副業ニーズは高まって、同社の場合、1副業求人あたりの平均応募数は15件という。圧倒的な買い手市場で、地方の中小企業で副業を探している人にとって、仕事はいくらでもある。
 一方、いまだに副業を解禁していない企業も数多いが、一度、副業人材を起用して働き方を把握すれば副業アレルギーを解消できるだろう。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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