Talk Genius

人と会社と組織を考えるニュースマガジン

転職者の初年度年収、伸び加速 企業「経験者に手厚く」

転職者が入社初年度にもらえる収入が増えている。人材サービス大手のマイナビ(東京・千代田)によると、4〜6月の転職者の平均初年度年収は465万8000円で前年同期比1.8%上昇し、伸び率が加速した。とくに業務経験者の伸びが大きく、未経験者との差が拡大。「即戦力」に手厚くという企業側の姿勢が転職市場の賃金をけん引している。
マイナビは転職サイト「マイナビ転職」に掲載された求人の初年度年収のデータを2019年から集計している。新型コロナウイルス下ではやや伸び悩む場面もあったが、毎年上昇が続き23年の年間平均では前年比0・5%上昇し456万6000円となっていた。
24年4~6月の求人数はコロナ渦前の19年平均に比べ67%増加。全日本空輸(ANA)では24年度の総合職中途採用を前年度比6割弱の100人程度に拡大。マツダは大卒や大学院卒を中心とした技術系と事務系の採用で、24年度は中途採用が25年度新卒採用を初めて上回った。
構造的な働き手不足を背景に新卒採用の初任給など賃金水準が全般的に上昇。人手を確保するためには採用候補者の転職前の賃金を上回る金額を提示する必要がある。
(日本経済新聞 8月8日)

かつて転職がキャリアダウンとみなされていた時代、面接で希望年収を聞かれると「前職と同等であれば」と遠慮がちに答える応募者が多かった。誰もが年収ダウンを覚悟していたのである。
いまは堂々と年収アップを要望できるようになった。傾向として転職後の年収は若年層ほど上がりやすい。経験やスキルは乏しくとも、他の年齢層よりも低い年収でも作用できるので増額しやすいのだろう。
厚生労働省が発表した令和5年上半期の転職入職者の賃金変動状況をみると、前職の賃金に比べて「増加」した割合は 38.6%、「減少」は 33.2%、「変わらない」は 26.4%。「増加」が「減少」を 5.4 ポ イント上回った。
このデータを持って。転職後に年収がアップする時代になったとはいえるのかどうか。実績とスキルが評価さればアップするが、人並みの水準と評価されば「減少」もしくは「変わらない」という結果になるだろう。
まだ、希望退職を経て中途採用に応募すれば、足元を見透かされて年収は良くて前職同等、多くはダウンすることが多い。この実態は応募者も覚悟しているので、採用側も低コストで戦力を確保しやすい。
厚労省調査で年齢層別に年収が増えた割合を比較すると、最も多い層は20~24歳で54.0%。半数を超えた。一方、すでに年収水準が高いうえに伸びしろの少ない年代になると、年収が増える割合は減ってゆく。50~54歳が25.3%、55 ~59歳が30.2%、60~64歳が11.5%。この年代でも転職して年収が増える人は逸材なのだろう。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

この著者の記事を全て見る

Talk Geniusとは-

ヘッドハンティング会社のジーニアスが提供する人と会社と組織を考えるニュースマガジンです。