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6月の実質賃金、27カ月ぶりにプラス転換 過去最長のマイナス脱す

厚生労働省は6日、6月分の毎月勤労統計調査(速報)を発表した。物価の上昇を考慮した働き手1人あたりの「実質賃金」は前年同月より1.1%増え、2022年3月以来27カ月ぶりにプラスに転じた。歴史的高水準となった今春闘による賃上げの広がりに加え、ボーナス(賞与)の大幅増が影響した。
 労働者が実際に受け取った「名目賃金」にあたる現金給与総額は、4.5%増の49万8884円で、30カ月連続で増えた。実質賃金の計算に使う6月の消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合)は3.3%と依然高い水準が続いたが、この物価上昇分を差し引いた実質賃金も1.1%増となった。物価高の影響で、実質賃金は5月まで過去最長の26カ月連続の前年割れとなっていたが、プラスに転換した。 
現金給与総額のうち、基本給などの所定内給与は2.3%増の26万4859円。一方、賞与を含む「特別に支払われた給与」が7.6%増の21万4542円となり、総額を大きく押し上げた。昨年に比べ、賞与を支払える企業が増えたためという。
(朝日新聞デジタル 8月6日)

 実質賃金の低下がつづいてきた結果、節約志向が高まっている。物価高騰が止まらない限り、節約は継続されるだろう。たとえば節約の象徴であるワンコインランチも、物価高騰によってテイクアウトの弁当以外はなかなか見当たらなくなった。イートインで500円以内に収められる飲食店は続々と姿を消し、弁当持参で出勤する人が増えているのではないだろうか。
総務省が発表した6月の家計調査によると、1世帯(2人以上)当たりの消費支出は前年同月を1.4%下回る28万888円。2カ月連続のマイナスだった。項目別の支出は、電気代などの「光熱・水道」が前年同月比7.3%減だったが、この猛暑でクーラーの使用を控えるわけにもいかない。その分、食費や遊興費の節約を強め、夏休みは旅行をあきらめて文字通り休むことを選ぶ家族も多いようだ。
この傾向は実質賃金が27カ月ぶりに上昇に転じたところで、容易に変わることはないだろう。
帝国データバンクの調査によると、2023年度決算期の全上場約3800社の平均年間給与は651万4000円で、前年度の637万3000円より14万1000円(2.2%)増えて、3年連続で前年から増加した。
しかし上場企業勤務者は一部の層に限られるうえに、賃上げもどこかで頭打ちになる場面を想定すれば、物価高騰を飲み込めるだけの余力は容易に生まれない。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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