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仕事と介護両立へ中小企業向け支援拠点 政府が来年度にも整備

仕事をしながら家族を介護する働き手が増加する中、政府が来年度にも中小企業向けの支援拠点の整備に乗り出すことが4日、分かった。従業員の仕事と介護の両立に向けた取り組みを、余力が乏しい中小企業が単独で進めるのは難しい。政府は、普段から中小企業と接点を持つ地方銀行などが拠点を運営し、経営者の意識づけや従業員への情報提供を行うことを想定。地域に根ざした拠点運営者が積極的に事業者に働きかける「プッシュ型」支援モデルを探る。
 高齢化を背景に仕事と介護に追われる「ビジネスケアラー」は増加傾向で、経済産業省によると平成24年に211万人だったが、ピークの令和12年に318万人に達する見込み。同年に介護離職者が11万人に増え、仕事と介護の両立困難による生産性低下などを合わせた経済損失が、約9兆2千億円に上る見通しだ。
政府の施策で先行した子育て支援に比べ「介護への理解度は低く、社会全体の対応が不十分だ」(政府関係者)との見方がある。特に人手不足に悩む中小企業では、多様な働き方が導入できなかったり、介護を要する社員の状況も把握しきれなかったりし、支援が行き届いていないと指摘される。
(産経新聞 8月4日)

介護離職が増加している理由のひとつは、介護休業・介護休暇の利用が進んでいないことである。総務省が2022年に実施した調査で、介護をしながら働く人で介護休業・介護休暇の利用者は11.5%に過ぎなかった。
 何が障壁になっているのだろうか。厚生労働省の調査で明らかになった課題は「支援制度に関する個別の周知」「相談窓口の設置」「支援制度に関する研修」である。
公的介護保険サービスには施設系と訪問系に大別され、26種類54サービスが提供されているが、これだけ多岐にわたるので、自治体の保健福祉担当者でも把握が容易でないという。まして介護者が自分に適切なサービスを選ぶのは困難だ。相談窓口の増設が必要で、自治体が運営する地域包括支援センター以外にも相談窓口が開設されないと、地域によっては相談を吸収しきれないだろう。
支援制度の例として、東京都の場合、東京しごと財団が介護休業取得応援奨励金を支給する。対象は、都内に本社または事業所を置き、6か月以上継続して雇用保険に加入している労働者が2名以上300名以下の中小企業などにおいて、合計15日以上の介護休業を取得した後、原職に復帰して3カ月以上継続雇用されている、都内事務所勤務の従業員がいること。奨励金額は、介護休業取得日数が合計15日に対して7万5000円、合計31日以上に対して55万円。
該当する企業に周知するには、取引金融機関や社会保険労務士、税理士などの協力が必要だろう。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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