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「育休取るなら辞めてもらう」管理職男性の3割が経験

「休みを取るなら辞めてもらう」「次の昇進はないと思え」――。育児休業などを理由に男性社員へこうした圧力をかける「パタニティーハラスメント(パタハラ)」が増えている。厚生労働省の調査によると管理職男性の3人に1人が被害を受けている。
「代わりがいないから困るなあ……」。渋谷区に住む30代の会社員は2023年、3カ月程度の育休取得を申し出ると上司からこんな反応が返ってきた。中間管理職で若手や中堅に指示を出す立場だ。結局、有給休暇を2週間ほど消化する形にとどまった。
 厚労省が自営業や役員、公務員を除く500人の男性を1月に調査したところ、過去5年間で被害を受けたと答えた男性は24・1%に上ったという。管理職に限ると33・0%に比率が高まった。
 育休や時短など育児に関わる制度の利用を希望し、実際に「利用した」と回答した人は47・8%と半数未満にとどまった。
 パタハラ被害を受けた人に内容尾尋ねると「上司や同僚による制度の利用の阻害」が24・2%で最も多かった。「継続的な嫌がらせ」が20・8%、「不利益な配置変更」が19・2%と続いた。
(日本経済新聞 7月30日)

 ハラスメントは人権問題である。を撲滅するには周知徹底や研修などでは手ぬるく、罰則規定の適用が必要だが、被害者に対する報復人事も想定される。加害者側はハラスメントを申告されると「会社にたてついた」と受け止めて、理不尽にも被害者感情を抱いて報復措置に暴走しがちで、負のサイクルに入ってゆく。
厚生労働省は育児休業等の申出・取得等を理由とする不利益取扱いの例として「解雇すること」「期間を定めて雇用される者について、契約の更新をしないこと」「あらかじめ契約の更新回数の上限が明示されている場合に、当該回数を引き下げること」「退職又は正社員をパートタイム労働者等の非正規雇用社員とするような労働契約内容の変更の強要を行 うこと」「就業環境を害すること」「自宅待機を命ずること」「労働者が希望する期間を超えて、その意に反して所定外労働の制限、時間外労働の制限、深夜業の制限 又は所定労働時間の短縮措置等を適用すること」「降格させること」――を示しているが、加害者側の社員・役員に対する罰則規定が運用されない限り、野放し状態がつづくに違いない。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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