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「人手不足」の企業が6割、中途採用や職場改善を強化 100社調査

コロナ禍からの経済活動の回復が進み、企業の働き手不足が深刻さを増している。朝日新聞の主要100社アンケートでは、約6割の企業が働き手が足りていないと答えた。中途採用の強化に加え、人材定着を進めて退職者を減らし、業務を効率化させる動きが強まっている。
 調査は7月1~12日に実施した。人手不足の状況を尋ねたところ、「ある程度不足」が57社にのぼり、「かなり不足」も1社あった。「不足でも過剰でもない」は33社で、「余っている」はゼロだった。不足する人材としては、ITエンジニアなどの専門職を挙げる声が多かった。  
人手不足の対策(複数回答可)では「中途採用の強化」が82社と最多で、「新卒採用の強化」の64社より多かった。専門性のある中途人材を積極的に取り込む動きが加速しているようだ。少ない人手で仕事をまわすために必要な「業務の効率化」を進めているとした企業も62社にのぼった。  
人材を社内に定着させる対策については、「人材育成・教育の拡充」と「賃金・手当の引き上げ」を選ぶ企業がそれぞれ80社を超えた。短時間勤務など「多様な時間設定の働き方」や「転勤制度の見直し」を選ぶ企業もあった。
(朝日新聞デジタル 7月22日)

採用力の強化とともに離職防止・定着促進にも注力しないと、戦力としてアテにしていた社員にいとも簡単に辞められてしまう。経済産業省が作成した「中小企業・小規模事業者の人手不足対応事例集」を開くと、リアルな対策が紹介されている。ひと昔前の事例だが、いまでも応用できる内容だ。
たとえば精密部品などを製造するエイベックス(名古屋市瑞穂区)の事例である。同社は10年前と比較すると現在の従業員数は約4倍、売上は約5倍 に増加したが、入社10年未満の従業員が約9割を占め、 新入社員が入社1年未満の社員から教育を受ける状況で、上 司の目も行き届かず、入社後すぐの退職が相次いでいた。
その結果、 2012年度の離職率は13.2%に達した。一方で、経営者は20年までに女性の正社員比率を40%に引き上げたいと考えていた。
そこで①教育に重点を置き、入社1年未満の教育日を設けた②文理・男女・国籍を問わない採用方針を掲げる③長時間残業の防止④短時間勤務の採用――に取り組んだところ、離職率は15年度では 8.8%、16年1月には5.4%と大幅に低下し た。女性社員の応募も増えた。女性社員の意見を聞くことにより、文系出身でも関係なく働きたいという意欲をもった女性が増加し、さらに 子育てをしながら短時間で働きたいと希望する女性の応募者が増加した。
人事に関する施策を立案する場合、社員のニーズを汲み取ることが望ましい。ニーズを汲み取ってもらったことがわかれば、社員も新たな施策に従うだろう。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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