2024/07/17
東京商工リサーチの調査によると、「退職代行サービス」を使って従業員が退職したことのある企業の割合は東京都内で9.3%だった。退職手続きが比較的、整っている大企業に限ると20.7%だった。転職市場の活性化に伴い、退職のハードルを下げるサービスの需要が広がっている。
調査は6月にインターネットで実施し、1079社の有効回答を集計した。利用割合は中小企業だと7.1%で大企業とは開きがあった。
退職代行サービスは、企業や弁護士法人などが本人に代わって退職に関する一切の手続きを代行する。退職時の人間関係や手続きの煩わしさを敬遠する若い世代が利用している。東京商工リサーチは「SNS(交流サイト)の普及で容易に職場環境を比較できる。働くことの意識の変化で退職ルールもこれまでの常識が通じなくなっている」とした。
(日本経済新聞 7月16日)
退職代行サービス利用の動機は、自分の意志が拒絶されたり、相手から糾弾されたりするなど厄介な場面を想定できるコミュニケーションの回避にある。厄介なコミュニケーションを切り抜けることは社会経験のひとつだが、それは後講釈に過ぎず、回避して物事を進められるのなら回避したいと考えるのは現実的だ。
ただ、退職の挨拶はどうするのか。上司、先輩、同僚、取引先など縁のあった全員にメールで済ませるのか、それとも関わりの濃淡を考えて、関わりの濃い人には対面で挨拶するのか。たぶん退職代行サービスの利用者は全員にメールで済ませるのだろうが、それだけ勤務先との関係をいち早く遮断したいのかもしれない。
退職代行サービスの利用が普及すると、上司に慰留されて退職を踏みとどめ、やがてキャリアに花が咲いて「辞めないで正解だった」という選択肢もなくなってゆく。東京商工リサーチは「退職代行業の浸透は昔ながらの『円満退職』という言葉を死語に追いやる契機になるかもしれない。同時に、終身雇用など仕事への意識も大きく変わろうとしている」とコメントしているが、根底にあるのは対面回避という時流である。
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