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上半期、上場企業の「早期退職」5364人で年間1万人ペース、黒字企業が約6割

2024年上半期(1-6月)に「早期・希望退職募集」が判明した上場企業は36社(前年同期24社)で、前年同期の1.5倍に達した。対象人員も5,364人(同1,486人)と同3.6倍に大幅に増え、すでに2023年1年間の3,161人を上回り、3年ぶりに年間1万人超が現実味を帯びてきた。
 上場区分は、東証プライムが25社(構成比69.4%)と約7割を占め、人数を押し上げた。また、黒字企業が21社(同58.3%)と約6割を占め、有力企業が好業績のうちに構造改革に取り組む姿勢が明らかになった。
 業種別は、電気機器が最多の9社(構成比25.0%)だった。このうち、新たに募集が判明したシャープは堺ディスプレイプロダクトの工場停止、ソニーグループは傘下のブルーレイディスクなど記録メディア事業から順次撤退に伴う募集だった。歴史的な円安の恩恵を受け、不採算事業の閉鎖など事業セグメントの見直しを急いでいる。
 また、賃金上昇による固定費削減のほか、高い有効求人倍率と活発な転職市場を背景に、退職勧奨に応じやすいタイミングにあることも影響しているとみられる。
(東京商工リサーチ 7月4日)

何ともかみ合わない構図だ。早期退職者が増加する一方で、人手不足関連倒産が過去最多のペースで推移している。人手不足で危急存亡の秋にある企業に早期退職者が移動すれば、いくばくか倒産を回避できるだろうが、移動に導くようなインフラはない。
傍目には倒産しなくともよい企業が倒産して、いかにもモッタイナイ事態が進行しているように見える。
2024年上半期の人手不足関連倒産は東京商工リサーチによると145件。前年同期比116.4%増と急増した。内訳は、「求人難」が58件(前年同期比114.8%増)、「人件費高騰」が47件(同95.8%増)、「従業員退職」が40件(同150.0%増)だった。
 現状のペースをたどると、年間最多だった23年の158件を抜くことはほぼ確実で、300件を超える可能性も出てきたという。いまや黒字企業でも事業モデルの転換に伴い、早期退職を実施することは珍しくない。
労働移動の仕組みが整備されればよいのだが、課題はマッチングである。AIの活用でと突破口を開けるだろうか。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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