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初任給バブル「賃金の若手シフト?」子育て世代の嘆き

人手不足を背景に、企業が新卒者の初任給の大幅引き上げに踏み切る動きが目立つ。2024年春闘は32年ぶりの高い賃上げ率となったが、企業が人材獲得競争から、賃上げ原資を新卒者や若手社員に重点配分する賃金シフトが進む。その結果、教育や住宅にお金のかかる40代の子育て世代への配分が細るという状況も生んでいる。
(中略)
 個別企業の賃金政策をみると、若手社員の賃上げや初任給の増額に原資を多く配分したという説明が多い。賃上げ率は社員一律とは限らない。20代若手社員に手厚くしたぶん、子育て世代が割を食っている可能性がある。  
連合のシンクタンク、連合総研は、会社員に仕事や暮らしぶりを聞き取る「勤労者短観」を年2回実施している。最新の24年4月調査によると、1年前と比べ「賃金の増加が物価上昇より小さい」としたのは、世代別には20代が48.9%と最も低く、40代は59.6%、50代は71.2%と年代とともに高まっている。
(毎日新聞 6月23日)

子供の教育費が重くのしかかる年代は、一般に30代中頃から50歳前後にかけてだが、教育費はどのぐらいかかるのだろうか。
常陽銀行の試算によると、幼稚園から大学卒業前の教育費の総額は、幼稚園から大学まですべて国公立の場合、大学時代に実家暮らしなら約1055万円(1人あたり)、1人暮らしなら1477万円。幼稚園から大学まですべて私立の場合は、それぞれ2528万円、2950万円である。
同行は、日本政策金融公庫の調査で大学入学1年目の教育費の平均額が231万円という
結果が出たことを踏まえ、「大学入学までに可能であれば250万円程度は貯蓄しておくとよい」と提言している。
 この年代の子供をもつ社員は昇級幅を引き上げてほしいだろうが、会社にとっては新入社員の確保と若手社員の士気高揚が優先だ。子育て世代は職場では中堅から幹部に就く立場で、士気は十分に高い。若手社員の処遇を手厚くした分、割を食っても腹に収めるだろうが、高待遇でスカウトされれば教育費を考えて転職する人も散見される。
 しかし、その程度の人材流出リスクは会社も織り込み済みだ。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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