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都内企業の夏季賞与、対前年比0.19%増

東京都は例年、都内の1000労働組合を対象に、夏季一時金要求・妥結状況を調査して、中間集計結果(令和6年6月6日現在)がまとまった
すでに妥結した労働組合のうち、前年妥結額と比較可能な194組合の平均妥結額は81万9696円で、これは平均賃金(32万7306円・40.9歳)の2.50ヵ月分に相当する。同一労組の前年妥結額(81万8136円)との比較では、1560円増加(0.19%増)となった。
産業別・業種別妥結金額の分析対象(5組合以上)となった16業種のうち、対前年比が最も高かったのは、「宿泊業、飲食サービス業」(14.88%増)、以下「建設業」(12.35%増)、「情報サービス」(10.55%増)。一方、対前年比が最も低かったのは、「その他運輸」(-35.80%減)、続いて「私鉄・バス」(11.88%減)、「道路貨物運送」(8.34%減)だった。
要求を提出した労働組合のうち、前年要求額と比較可能な254組合の平均要求額は87万7292円。同一労組の前年要求額(84万9692円)との比較では、2万7600円増加(3.25%増)となった。
(東京都作成ニュースリリースを要約 6月10日)

実質賃金が下がりつづけるなかで、夏季賞与が増えないと労働者の生活設計は一段と厳しくなるが、賞与の持続的な増加はどこまで可能なのだろうか。
帝国データバンクの調査でも、東京都の調査と同様の結果が出ている。今夏の賞与について「賞与はあり、増加する」と回答した企業の割合は39.5%(前年比2.1ポイント増)だった。この企業群には業績の回復を理由に挙げた企業が多数あった一方で、業績は改善していないものの物価高騰に対する従業員の経済的負担の軽減や、従業員のモチベーション維持を理由に賞与を増やす企業も少なくなかったという。業績が改善しなければ無理をした反動が今冬の賞与に響き、前年比マイナスに至る事態も懸念される。
一方、この間の円安の打撃を受けて業績が悪化した企業には、「円安にともなう仕入価格の高騰分を十分に価格転嫁できず、利益が大幅に減少してしまったために前年比50%減の支給になった」(輸送用機械・器具製造)というように、支給額が前年比マイナスになった例も多い。「賞与はあるが、減少する」は11.3%で、前年比2.0ポイント増)だった。
中小企業にとっては、価格転嫁が今後も人件費確保の焦点のようだ。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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