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再雇用制度の拡充および処遇見直し

 ニトリホールディングスはシニア層のさらなる活躍推進に向けて、2024年7月より、希望すれば70歳まで働けるように再雇用制度を拡充する。また、再雇用制度における報酬水準の見直しを行う。
 見直しの1点目は、継続雇用期間を65歳から70歳へ拡大する。これまでも年齢による雇用制限を設けず、65歳を超えても継続雇用を行ってきたが、今後は継続雇用の基準を具体化し、従業員がより安心して働くことができるように見直しを行う。
 2点目は、再雇用者の報酬基準を見直す。一定以上の職位においては基本給・一部手当を定年前と同一の金額とし、報酬水準を定年前と比較して最大9割維持するように改定する。
 このような人材投資の取り組みは、多様な人材が挑戦し、活躍できる環境をさらに充実させることができると考えており、従業員のモチベーション向上、さらには組織全体の生産性向上につながるものを考えている。
(ニトリホールディングス作成ニュースリリースを要約 5月28日)

 かりに定年制を設けなければ、人件費予算が決まっている以上、一向に若い労働力を起用できず、社員の平均年齢は毎年上がってゆく。社内には経験則至上主が蔓延して、イノベーションなど期待できない。年齢によって雇用を区切るのは間違いという見解もあるが、戦力を強化するうえで新陳代謝が欠かせないという前提に立てば、定年という区切りは妥当である。
 日本の企業に定年制が導入されたのは明治時代中頃にさかのぼるが、百数十年にわたって継承されているのは、それだけ合理的な制度であるからだ。
 ただ、若年層の人口が減少してゆく時流にあっては、定年を延長しないと戦力を維持できない。70歳定年制の普及はそう遠くなく、75歳までの再雇用も珍しくなくなるだろうが、イノベーションは若い社員に任せて、高齢社員に求める役割を改めて設定したい。
生物学者の小林武彦氏(東京大学定量生命科学研究所教授)は養老孟司氏との対談で、次のように語っている。
「老化した後も社会の役に立つ人たちのいる集団が生き残り、彼らの子孫としての私たちが存在している。現代人の寿命がここまで延びたのは、シニアが社会に求められて存在しているおかげだと見ることができます」(『老い方、死に方』)

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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