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江東区、中小の事業承継支援

東京都江東区が廃業が懸念される中小企業の事業承継を支援する事業を新たに始める。経営者の高齢化や後継者の不在によって事業継続が難しい企業を金銭面などでサポートする。
事業承継に伴い、競争力の強化や生産性向上のための設備投資にかかる経費を補助する。8月下旬に開始予定で、製造業は200万円、非製造業は100万円を上限とする。
5年以内に事業を引き継ぐ予定の中小企業などを対象にした融資制度も新設する。融資上限は2000万円。事業転換など新規事業に参入する事業者に対して融資をする制度も始め、上限額は4000万円とする。いずれも9年以内の返済が条件となる。
区はあわせて6月下旬から、事業者に中小企業診断士などを派遣する相談支援も始める。大久保朋果区長は「事業者が単に生き残るだけでなく、より発展できるような支援をしたい」と話した。
(日本経済新聞 5月15日)

江東区の資料によると、区内で製造業を営むA 社の社長と後継者の長男は、4年後の経営者交代に向けて事業承継計画を策定し、新たな整備を導入して既存のノウハウを活用した生産性向上を意図して、事業承継支援資金を活用した。
区内で建設業を営むB社の場合、社長には親族に後継者がいなかった。3年前に従業員が代表取締役に就任したが、経験が浅いこともあって資金繰りに不安を感じ、区の経営相談員に相談して事業承継計画書を策定し、事業承継資金を申し込んで原材料費と人件費に充当した。
区内で和食店を営む個人事業主は、事業承継を2年後に予定していた。後継者の長女は近隣に洋食店を出店することを希望していたが、事業承継資金を活用して新店舗開設費に充当した。
いまや事業承継時代である。中小企業基盤整備機構全国の48カ所で運営する事業承継・引継ぎ支援センターへの相談者数は令和4年度に2万2361者。前年度比107%で過去最高を記録した。第三者承継(M&A)の成約件数も、1681件 (前年度比111%)と、同じく過去最高を記録した。
後継者難の企業と起業家志願者を上手くマッチングできれば、事業承継問題は好転するようにも見えるが、しがらみの多い事業承継には、起業の何倍もの苦労がつきまとうことが少なくない。マッチングは次々に決まるものではない。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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