2024/05/22
地方で中小企業の賃金が都市部を上回る勢いで伸びている。従業員100人未満の企業の5年前との増加率を比較すると、上位10府県は地方がほとんどで、東京都や大阪府を大きく上回る。実態は人手を何とか確保するための受け身の賃上げだ。持続的に賃金を上げるには価格転嫁や生産性向上が重要になる。
「かつては賃金を抑えても働いてもらえたが、賃上げしないとやっていけなくなった」。宮崎商工会議所の松山茂常務理事は人材流出の懸念がここ数年で一気に高まったことを話す。宮崎県内のあるタクシー会社では新型コロナウイルスの感染拡大前から運転手の給与が5~8割上がった。
規模の小さい企業では、実は同県の賃上げ率は全国トップだ。従業員10~99人の企業の基本給(所定内給与)は2023年に18年比13・2%増えた。東京や大阪を上回る。
鉄道や高速道路の説側芽悪くかつて「陸の孤島」と呼ばれた宮崎県。16年ごろ交通網が整備され、県外企業とお人材争奪戦が激化した。そこへ熊本県に台湾積体電路製造(TSMC)が進出するなど九州に大型投資が相次ぐ。
(日本経済新聞 5月12日)
都市部と地方の賃金格差はおもに企業規模の差に由来している。企業規模と労働生産性はほぼ比例関係にあるが、都市部に規模の大きい企業が集中していることから、都市部の企業と地方の企業では労働生産性の差が賃金格差に反映されている。
さらに業種分布の違いも、都市部と地方の賃金格差の要因になっている。国土交通省によると、東京都では金融・保険業や情報通信業、専門・科学技術など高生産性産業が多く、地方では、比較的労働生産性の低い産業の割合が高い。
この構図に変化をもたらしつつあるのが、九州での大型工場建設ラッシュである。いかにも40年前の熱気がよみがえってきたようだ。1983年4月、高度技術工業集積地域開発促進法(テクノポリス法)が成立し、全国でテクノポリス構想が動き出す。とりわけ精力的に動いたのが大分県の平松守彦知事で、大分県を半導体産業の集積基地にしようと工場誘致を実施した。
現下の大型工場建設ラッシュは地方創生を意図した行動ではないが、当該地域の賃金水準を向上させ、雇用を呼び込めば地方は創生される。
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