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国家公務員「ジョブ型」拡大を 人材確保へ有識者会議

国家公務員の人事制度を協議する人事院の「人事行政諮問会議」は9日、中間報告を川本裕子総裁に手渡した。人材確保のため職務内容で報酬を定める「ジョブ型」を拡大する案を提起した。年功序列型の硬直的な制度を改め、専門能力を持つ民間人材の中途採用などを進めやすくする。
職務内容で報酬を定める制度は現在、任期付きの民間人材の登用などに限って採用できる。今回の中間報告は無期雇用を含めて様々な分野に順次広げる方向性を打ち出した。まずは人材獲得の必要性が高い分野などで導入することが念頭にある。
今回の改革案には外部人材の登用や若手の離職防止という狙いがある。報告は若年層に訴求する改革の必要性を指摘し「市場価値に見合った競争力のある適切な報酬額にすることも重要」と訴えた。
デジタル分野など民間から人材を呼び込むには職務に妥当な待遇が欠かせない。既存の等級にあてはめた従来の人事制度のもとでは個別の職務内容に則した報酬を柔軟に設定しにくい。
(日本経済新聞 5月10日)

「採用試験申込者数の減少や若年層離職者の増加により、国家公務員の人材確保は危機的な状況」――人事行政諮問会議は中間報告で訴えた。採用試験申込者数は10年前に比べて総合職試験・一般職試験のいずれも約3割減であるうえに、若年層職員の離職の増大 近年、総合職試験採用者が毎年100人以上離職している。
 国家公務員の人材確保難は国力の低下にもつながる。まさしく国難ともいえるこの状況に対して、諮問会議は「職員を価値創造の源泉と捉え、職員に対して投資を行い、職員の育成・成長により、組織パフォーマンスを向上させ、国民へ世界最高水準の行政サービスを提供する必要がある」と主張した。
提言内容は国家公務員の人事管理に相当な変革を迫っている。たとえば「行動規範の明確化」では「禁止事項ではない、主体的・意欲的に働くための行動規範を明確化」。「職務ベースの報酬設定、能力・実績主義の徹底」では①職務内容や必要なスキルの明確化②職務に応じた報酬水準の設定③年功的処遇からの脱却。
 諮問会議の構成員には峰岸真澄氏(リクルートホールディングス代表取締役会長兼取締役会議長)が就任しているが、今秋にとりまとめられる予定の最終報告には、前例に拘泥しない革新的な人事管理の提言を期待したい。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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