2024/05/06
勤務する職種を限定する労使合意があった場合に、雇用者が労働者を配置転換できるかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷(草野耕一裁判長)は26日、「労働者の同意なしに、配置転換は命令できない」との初判断を示した。原告の労働者側の主張を退けた2審・大阪高裁判決(2022年11月)を破棄し、審理を高裁に差し戻した。裁判官4人全員一致の意見。
1、2審判決によると、原告の男性は01年から滋賀県福祉用具センターに勤務し、主任技師として福祉用具の製作や改造を担当。ところが19年に事前の打診なく、総務課への異動を命じられ、違法な配置転換だとして損害賠償を求める訴訟を起こした。
1審・京都地裁判決(22年4月)は、男性とセンター側の間に技術者として職種を限定して就労させる暗黙の合意があったと言及。ただし、センター側では用具の製作・改造の仕事の需要が減少しており、センター側は男性の解雇を避けるために配置転換を命令したとして、違法性はないと判断した。2審も支持した。
これに対して小法廷は、男性から同意を得ていない以上、センター側に配置転換を命令する権限はないと指摘。その上で、センター側に賠償責任が生じるか、さらに審理を尽くすべきだとした。
(毎日新聞 4月26日)
この4月から採用時に就労条件の明示が義務付けられた。労働基準法第15条第1項は「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない」と規定しているが、その徹底が図られる。
明示する項目は労働時間、賃金、退職手当、安全衛生、職業訓練、災害補償など14項目だが、そのなかに「就業の場所及び従業すべき業務に関する事項」が含まれる。
同意に基づく配置転換はジョブ型雇用でなくとも必須になった。社員は会社のコマではないという考え方が反映されているが、配置転換は適材適所の観点で会社の都合で実施される措置なので、現実はそう単純ではない。
この判決にともなって気になるのは、ジョブ型雇用の普及と相まって、ビジネスモデルの変更や業績悪化などを理由に、職種別に解雇しやすくなることだ。雇用を優先すれば社員は配置転換を受け入れざるを得ず、配置転換に同意しなければ退職を強いられる可能性が高くなるのではないのか。
雇用を選ぶのか、担当業務を選ぶのか。どちらを選ぶかは本人次第だが、会社は社員の入れ替えを行いやすくなる。配属部署はプロジェクトチーム、社員はプロジェクトメンバーという構図に向かう企業も増えるだろう。
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