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連合の春闘賃上げ率、3次集計は5.24% 中小組合健闘で高水準維持

連合が4日発表した2024年春闘の3次集計は、基本給を底上げするベースアップ(ベア)と定期昇給(定昇)を合わせた賃上げ率が平均で5.24%だった。2次集計からわずかに下方修正されたが、前年同時期比では1.54ポイント上昇した。中小組合の健闘が目立つという。
賃上げ率は1991年の5.66%(最終集計)以来33年ぶりの高水準。会見した芳野友子会長は「新たな経済社会へのステージ転換に向けた大きな一歩になっている」との認識を改めて示し、この先も交渉が継続していく中で高い水準が維持されることに期待を示した。
傘下労働組合の要求に対する4月2日午前10時時点の企業側回答をまとめた。「平均賃金方式」で回答を引き出した2620組合の賃上げ額は平均で1万6037円、賃上げ率は5.24%だった。
このうち、組合員300人未満の中小組合1600組合の賃上げ率は4.69%となり、2次集計の4.50%から上昇した。芳野会長は要因について「中小・小規模事業者にとって人材不足の問題が大きく、人の流出に歯止めをかけるための賃上げが必要ではないか」と分析した。
(ロイター 4月4日)

3次集計を受けて、連合は「育児や介護と仕事の両立に向けた環境整備、60歳以降の高齢期における雇用と処遇に関する取り組みなどは昨年同時期を超える回答・妥結件数となっている」とコメントした。たんなる賃上げではなく、私生活との両立も考慮された。
 一方、組合員300人未満の中小組合1600組合の賃上げ率4.69%については、着目したい数字がある。
東京都が都内1000労働組合の春季賃上げ要求・妥結状況の中間集計結果(令和6年3月21日現在)を発表した。すでに妥結した労働組合のうち、前年妥結額と比較可能な44組合の平均妥結額は1万4919円で、これは平均賃金(31万8429円・41.1歳)の4.69%に相当する。
連合が発表した上記の賃上げ率を一致した。同一労組の前年妥結額(9648円)との比較では、5271円増加(54.63%増)となった。連合と東京都の調査対象が一部重複しているかもしれないが、中小企業の賃上げ率は5%弱という水準のようだ。
 大手企業に比べれば低いが、さらに低いのが介護業界である。2024年度介護報酬改定の改定率プラス1.59%のうち0.98%が介護職員等処遇改善加算の財源に充当される。政府は、この加算の適用によって、24年度に2.5%、25年度に2.0%のベースアップにつながるように配分すると発表した。賃上げ率は中小企業の半分に満たない。
この業界では人手不足を解消できる見通しが立っていないだけに、3年後の介護報酬改定でも賃上げが大きな焦点になりそうだ。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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