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年2回、社員全員で決める「給与会議」 意識変化、働きがいアップ

決算書類を見せるから、給与は自分たちで決めて――。化粧品販売と美容室経営を手がける「エコノワ」(岐阜市)は、社員全員が参加する「給与会議」で、給与と経営目標を決めるユニークな働き方改革を進めている。社員の定着率が上がり、「働きがい」にもつながっているという。
 エコノワは、会長の武藤花緒理さん(53)がヘアカラーの輸入販売の会社として2008年に立ち上げた。「ほぼ個人経営だった」という会社が大きく変化したのは17年。母親の美容室を引き継ぐことになった。母親時代のスタッフは全員店を去り、10人の美容師を新たに雇った。  
「人事管理なんてできない」と手探りの中で、早速起きたのが「もっと給料を上げてほしい」との不満の声。「だったら自分で決めてよ」と言うのが、「給与会議」の始まりだった。  
会議は3月と10月の年2回。社員全員が参加する。損益計算書や貸借対照表を提示。来期の目標を立てて、売り上げから人件費にさける費用を逆算して、給与をどう分配するかを決める。
「周りと比較するから不満が出る。すべてオープンにして話し合った方がいい」と武藤さん。給与会議では、美容師の数が多い中で、事務職の給与引き上げも決まった。
(朝日新聞デジタル 3月24日)

皆で決めれば不満は出ない――経営理念や行動指針を経営側が策定して社員に遵守を求めると、反発して面従腹背を決め込む社員はどこにでもいる。ところがグループワークなどによって全社員で策定すれば、何より納得性が違う。自分の案は却下されても策定に参画した以上、決定事項を受け入れる以外ない。
エコノワの取り組みは小規模な会社では有効な方法である。この取り組みは、朝日新聞社と転職支援サービスのミイダスが共催した「はたらく人ファーストアワード2023」で、1009団体の応募のなかから「ゴールド」を受賞した。
審査員は「従業員がチームごとに経営計画を策定し、人件費と利益をもとに経費や自身の給与を逆算して決定する独自の給与会議は興味深い取り組みだった」と述べ、次のように評価した。
「従業員自らの給与について決定権を持ち、会社の利益構造を理解することで、自身の役割をより明確に把握できるようになり、経営者マインドをつくるうえでも良い影響がありそうだ。非常にコントロールの難しい制度だが、自走できる従業員が増え、定着率の向上などにつながっている点を評価した」
 給料はもらうものではなく、みずから稼ぐものという単純な理を社員が認識できる仕組みが稼働している。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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