2024/03/26
政府は15日の閣議で、外国人技能実習に代わる新制度「育成就労」の新設を盛り込んだ技能実習適正化法と入管法の改正案を閣議決定した。技能実習は国際貢献を掲げていたが、国内の人手不足が深刻化する中、未熟練の外国人を労働者として正面から受け入れて育成する制度に改める。政府は今通常国会に両改正案を提出した。公布後3年以内の施行を目指す。
改正案によると、技能実習の在留資格を廃止して育成就労を創設する。在留期間は原則3年間で、その間に即戦力の人材と位置付けられる在留資格「特定技能1号」(在留期間は通算5年)の水準まで技能を育成する。育成就労、特定技能1号を経て、熟練技能が求められる「特定技能2号」の試験に合格すれば、家族帯同の無期限就労が可能になる。育成就労と特定技能は受け入れ分野をそろえ、一体的に運用する。
同じ仕事の範囲内で職場を変える「転籍」は、技能実習だと3年はできないことになっていたが、育成就労では分野に応じて1~2年に緩和する。悪質なブローカーへの対策として、不法就労する外国人の雇用やあっせんを取り締まる「不法就労助長罪」の法定刑を引き上げる。
(毎日新聞 3月15日)
育成就労制度の焦点は外国人材の転籍を認めたことだ。雇用主にとってはコストをかけて受け入れた以上、早期に辞められては困るのだが、人権問題に由来する制度改正だけに転籍の許可は必然だった。
だが、この改正について日本弁護士連合会の小林元治会長は反対意見を表明している。
「本方針は、就労開始から一定の期間経過後には転籍を許容するとしながらも、その『一定の期間』について、1年とすることを目指しつつ、当分の間、受入れ対象分野ごとに1年から2年までの範囲内で設定することができるとした。しかし、このような運用を期限を明示せずに『当分の間』認めることは、1年間を超える転籍制限が長期にわたり容認され、あたかも原則となるかのような運用を許容するおそれがあり、反対である」
さらにこう主張する。
「本人の意向による転籍を認めるとしつつ、転籍可能な期間を制限し、また実質的に転籍を困難とするような制度設計は、改めるべきである」
連合(日本労働組合総連合会)の清水秀行事務局長も人権問題を注視して「育成就労制度における転籍のあり方や、有識者会議での議論なく盛り込まれた永住許可制度の見直しについては、人権の尊重が担保されることが大前提である」と指摘している。
転籍をめぐるトラブルが再燃すれば、日本が選ばれなくなってしまう。
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