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TSMC開所に沸く地元経済 人手不足で理系人材の奪い合いも

半導体受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)の第1工場開所式が24日、熊本県菊陽町で開かれ、地元では波及効果を含め7兆円規模とも指摘される設備投資に期待が高まる。ただ、深刻な人手不足など解消すべき課題も多い。
(中略)
現在、TSMC第1工場だけで約1300人が勤務しており、第2工場も稼働すれば計3400人が働く。九州各地の半導体関連人材は今後10年間にわたり年間1000人ほど不足するとの予測もある。半導体産業の基盤強化を目指す地元産学官団体が関連人材の育成・確保を検討するが、「今も理系人材は奪い合い。この傾向はしばらく続く」(関係者)見通しだ。
熊本県内の人手不足は飲食店や清掃、コールセンターなど業種を問わず広がり、人材確保に必要な時給水準は1・5倍程度に上昇した。人材派遣企業も相次いで進出したが「派遣する人材の確保すら難しい」(担当者)状況だ。慢性的なホテル不足や交通渋滞、不動産価格の高騰もいまや〝熊本名物〟。工場が立地する熊本県菊陽町を中心に人口が流入し、町の姿は大きく変わりつつある。
(産経新聞 2月24日)

 情報サイト「求人ボックス」のよると、熊本県の企業別平均年収ランキングは高い順に、
平田機工676万円 肥後銀行659万円、グリーンランドリゾート510万円、ヤマックス489万円、ビューティ花壇466万円、Lib Work457万円。
 この水準に対してTSMC熊本工場スターティングメンバーの年収は、地元では破格の水準である。求人サイトで検索すると、内部監査を担当するInternal Audit Managerは1000万円~2,000万円、ファシリティ・エンジニア(水処理)は600万円〜900万円、受入材料品質向上エンジニアは600万円〜1200万円、インフラ・ネットワークエンジニアは600万円〜1,200万円。
 この格差について、TSMC熊本工場の給与水準は県内企業の賃上げをけん引するという楽観的な見方もできるが、むしろ賃上げ競争に巻き込まれて人件費倒産に至るか、賃上げをあきらめて人材を確保できないという負の側面も潜んでいるだろう。
いずれにせよ、菊陽町を中心にTSMCの企業城下町が形成されれば地元経済は賑わうが、他県からの参入企業も増えて優勝劣敗が激しくなってゆく。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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