Talk Genius

人と会社と組織を考えるニュースマガジン

医療職の賃上げ財源に初・再診料の増額要求

厚生労働省が2月7日に開いた中央社会保険医療協議(会長:小塩隆士・一橋大学経済研究所教授)で、2024年度診療報酬改定に対するパブリックコメントの結果を公表した。今回の改定は医師の人件費や技術料に充当する本体の改定率が22年度改定の0.48%を倍近く上回る0.88%のプラス改定だった。それでもパブコメに賃金アップの財源不足を指摘する意見が相次いだ。
「物価高のなか、従業員の給与増額は、大幅な診察料アップがないとできない」「今年は他の職業で5%以上の賃上げを目指すとされているにも関わらず、医療従事者が2.5% というのは不足している」「今の保険点数では、物価高騰・賃金上昇に追いつけず、人材確保の困難、新たな設備投資 困難になる」「政府が物価上昇率を上回る賃上げへと旗を振っているのに対し、医療関係者の賃上げ目標は 低く、加えて感染症対策等のコスト増があるため、明確な根拠に基づく大幅な点数引き上げを行うべき」。
財源確保策で浮上しているのは初診料と再診料の増額で、パブコメにも「震災等の非常時に向け、普段から医療・介護のマンパワーが必要であるため、診療報酬、介 護報酬の引き上げ、初診料、再診料の大幅引き上げが必要」賃上げを全ての医療機関・全ての医療職種で行えるよう基本診療料の大幅な引き上げは必要で、その場合も加算扱いではなく、基本診療料自体の引き上げとすべき。細かな施設基準や 実績報告を求められても対応が困難であるため、一律で初・再診料を引き上げるべき」などの意見があった。
(厚生労働省発表資料を要約 2月7日)

 2024年度診療報酬改定では、これまでの改定以上に財務省がマイナス改定を強く主張したという。それだけに医療業界は胸をなでおろしているかといえば、けっしてそうではない。
今回の診療報酬改定率は本体がプラス0.88%だが、そのうち40歳未満の医師・薬局薬剤師・事務職員・歯科技工士などの賃上げ分が0.28%、看護職員・病院薬剤師などの賃上げ分が0.61%で、効率化。・適正化がマイナス0.25%という配分比率である。
医療団体幹部は「プラス改定分のほとんどを賃上げにしか充当できず、医療技術には廻せない非常に厳しい改定だった」と総括する。
一方、診療報酬のプラス改定分はそのまま国民の負担増に入れ替わる。24年度改定は診療報酬だけでなく介護報酬もプラス改定だったが、国費が診療報酬に800億円、介護報酬に432億円、併せて1200億円超が投入される。
この現実を踏まえて、病院経営団体幹部は「国民負担が増えたことに対して、私たちは責任を自覚し、責任を果たさなければならない」と決意を述べる。医療提供側から国民負担増に言及されるのは珍しい。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

この著者の記事を全て見る

Talk Geniusとは-

ヘッドハンティング会社のジーニアスが提供する人と会社と組織を考えるニュースマガジンです。