Talk Genius

人と会社と組織を考えるニュースマガジン

首都圏の中小企業、賃上げ分水嶺 実施27%・未定37%

首都圏の中小・零細企業の賃上げ動向が分水嶺を迎えている。城南信用金庫(東京・品川)が東京都や神奈川県の取引先約800社を対象に2024年の賃上げ予定について尋ねたところ27.7%の企業が「実施予定」と答え、37.3%が「未定」とした。23年の賃上げ実績は44.3%。継続的な賃上げが実現できるか、方針を決めていない企業がカギを握る。
城南信金が1月中旬に取引先833社を対象に賃上げ予定について調査した。時期は春などと限定せず「24年の賃上げ」の予定とした。ベースアップや定期昇給、賞与などを含む。
23年の賃上げについては44.3%と半数近い企業が「実施した」と答えた。24年の予定については35.0%の企業が「予定はない」と態度を決めている一方で、4割近い企業がまだ判断しかねている。
介護・福祉事業を手掛けるライフクリエーション(東京・目黒)は24年、定期昇給によって10%の賃上げをする予定だ。23年は賃上げを見送ったが「職員確保のために必要」(在間隆太社長)と方針を決めた。同社の従業員は約15人。平均年齢は約35歳と同業のなかでも比較的若い。在間社長は「業務を効率化して給与に反映し、人が集まるサイクルを作りたい」と話す。(日本経済新聞 2月6日)

中小企業の賃上げを実施できるかどうかは価格転嫁にかかっているが、発注側には、価格転嫁の理由に固執する風潮がある。エネルギー価格や材料費の高騰を理由に納入価格の変更を打診されると、受け入れる流れにあるが、賃上げを理由にされるとなかなか受け入れないという。
仕入れコストの面倒はみるが、人件費の面倒をみるのは我が方の問題ではなく、雇用主が差配する問題だ。発注先の社員は我が方の社員ではないのだから、処遇改善を求められても対応できない――そんな意識が発注側にはあるようだ。
その根底は、発注先の中小企業が賃上げを実施できず、社員の退職が相次いで事業が廻らなくなれば、他の発注先を確保すればよいと考えていることにある。乱暴な話だが、発注側と受注側の力関係が大きくかい離していれば、たとえ「協力会社」と呼ばれていても、唯一無二の技術を有していない限り、入れ替え可能な立ち位置に置かれている。
賃上げを主導する国が、人件費増を理由とする価格転嫁を受け入れるように強く要請する以外にないのだろうか。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

この著者の記事を全て見る

Talk Geniusとは-

ヘッドハンティング会社のジーニアスが提供する人と会社と組織を考えるニュースマガジンです。