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ベンチャー企業への就職 インターンで見極めて

「ベンチャー企業の方が成長できるのではないかと思い、そちらへの就職を考えています」。都内の私立大学3年の女子学生からの相談だ。就職を自分の成長機会ととらえている意欲的な人だ。
今の段階のインターンシップではベンチャー企業だけでなく大企業、中小企業など幅広く様々な企業を比較検討するのがよいだろう。それぞれのインターンシップに参加し、よく検討したうえで自分に合っていると考えてベンチャー企業に決めるのならば、それも良いと思う。
そもそも「ベンチャー」の語源は「冒険的な」という言葉から来ている。新たな分野に挑んでいくという意味で、新しいビジネスモデルの新興企業をそう呼ぶのが通例である。今や世界的な大企業群となったGAFAも元はベンチャー企業だった。
しかし、事業内容に目新しさがなく、単に少人数で小さく始めただけの会社はベンチャーとは呼べない。それなのに、カタカナで耳ざわりよく聞こえるようにベンチャー企業と自称していたら要注意である。
なぜなら今どきの大学生はベンチャー企業にひかれがちだからだ。若者だけで、活気ある会社に見えて魅力的に違いない。しかも冒頭の学生のような意欲的な人が誘われやすい。
(日本経済新聞 1月9日)

この記事の筆者はハナマルキャリア総合研究所代表の上田晶美氏。学生に対する貴重な助言で、ベンチャー企業への就職を検討している学生にとって必読の記事である。
ベンチャービジネスという和製英語が普及しはじめたのは1970年代中頃で、その担い手であるベンチャー企業には公的な定義はないが、「設立5年以内」「研究開発型企業」「売上高対研究開発費率が30%以上(研究員の人件費含む)」と区分けされた時代もあった。
その時代はベンチャー企業が研究開発型の製造業に限定され、流通業やサービス業はベンチャー企業とみなされていなかった。しかし中小企業という立ち位置では採用に不利などの理由で「物流ベンチャー」「外食ベンチャー」「不動産ベンチャー」などベンチャーを自称する企業が乱立するようになった。
いまは「スタートアップ」という言葉に置き換えられたが、その企業が成長力を有するかどうかは予測不可能だ。ダメになる企業なら見分けられるが、成長するには経営幹部の能力と努力に加えて運も大きなウエイトを占める。
ベンチャー企業に就職する学生には独立志向も多いだろうが、就職して最も学べるのは社長の考え方と働き方である。ただ、勢いのあるベンチャー企業ほど社長のワンマンシップが強く、相性の有無で社員の成長は左右される。しかも、そんな企業ほど「会社の常識=社会の非常識」という盲点に陥りやすい。
結局、ベンチャー企業に就職すれば短期間に成長できるというのは経営陣次第だ。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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