Talk Genius

人と会社と組織を考えるニュースマガジン

介護報酬、1.59%引き上げ プラス改定、他産業との格差残る

政府は16日、2024年度の介護報酬について1・59%引き上げる方針を決めた。他産業の賃上げで介護業界からの人材流出が進み、担い手確保のために引き上げが必要と判断した。
今回は6年に1度の診療報酬との同時改定で、同時改定時では初めて診療報酬の改定率(0・88%引き上げ)を上回った。介護報酬は介護保険で提供される介護サービスの公定価格。3年に1度見直され、介護事業者の主な収入源となる。前回改定(21年度)は0・7%のプラス改定だったが、他産業の賃金水準とは格差が残った。  
厚生労働省の調査では、22年の介護職員の月額給与平均は29・3万円で、全産業平均の36・1万円とは約7万円の開きがある。さらに、今年に入り、民間主要産業で30年ぶりの高水準となった春闘に、物価高騰が追い打ちをかけた。介護事業者は「人手不足と経営難で介護現場は崩壊寸前」と大幅アップを求めていた。  
23年度で約13兆円に上る介護給付費は、保険料と公費で折半して賄う仕組みになっている。介護報酬を引き上げると、保険料負担は重くなる。
(毎日新聞 12月16日)

介護報酬がプラス改定に決着したことで、介護事業者の経営が改善されるとは限らない。給与水準を多少引き上げれば離職を防げるかもしれないが、プラス改定分は人件費に消えてしまい、収益力を抜本的に強化できるには至らないのではないのか。
2023年1~8月のデータだが、東京商工リサーチの調査によると、訪問介護事業者の倒産は44件(前年同期比46.6%増)、負債総額は16億8,900万円(同50.0%増)。それぞれ前年同期を大幅に上回った。年間倒産の最多は、コロナ禍前の19年の58件だが、人手不足や物価高が続いているため、23年は60件に到達する可能性も出てきたという。
ファクタリング会社幹部に介護事業者の利用状況を尋ねたところ、「介護報酬を売掛債権に差し出す中小の通所介護事業者の利用が増えてきた」と教えてくれた。社会保険診療報酬支払基金や国民健康保険団体連合会からの入金を待っていては資金繰りに支障が出てしまうため、15%前後の手数料を支払ってでも現金化を急いでいるのだ。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

この著者の記事を全て見る

Talk Geniusとは-

ヘッドハンティング会社のジーニアスが提供する人と会社と組織を考えるニュースマガジンです。