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今年の賃上げ率は3.2% 労組ない中小にも波及、99年以降で最高

厚生労働省が28日発表した2023年の「賃金引上げ等の実態に関する調査」によると、1人あたりの平均賃金の引き上げ率は3・2%だった。前年より1・3ポイント増え、現在の調査方法となった1999年以降で最も高い。対象には労働組合がない企業も含まれ、労組と賃金交渉がない企業にも賃上げが波及している実態が明らかになった。
 調査は7~8月に常用労働者100人以上の企業を対象で、1901社が答えた。厚労省は約8割の企業に労組がないと推計する。  
引き上げ率が3%台になるのも初めて。引き上げ額でみると9437円で、前年から3903円増えた。  
企業規模別では、常用労働者5千人以上が4・0%だった。また、100~299人の中小企業は9割に労組がないとされるが、2・9%となり、前年から1・0ポイント増と大きく増えた。
(朝日新聞デジタル 11月28日)

中小企業の賃上げを持続的に実施するには価格転嫁が焦点となる。経団連の十倉雅和会長は11月27日、講演で中小企業の賃上げには価格転嫁が必要と述べ、翌28日には連合の芳野友子会長が経済同友会の新浪剛史代表幹事と面談し、人件費上昇分の価格転嫁を訴えた。
ものづくり産業労働組合JAMの川野英樹副書記長は「JAMの主張」に「2023 年春季生活闘争結果を分析すると、価格転嫁の成否 によりベア額 637 円・平均賃上げ額 1,112 円の差が出て、価格転嫁が出来た企業に優位的な賃上げ結果となった」と報告したうえで、「2024 年春季生活闘争で『継続的な賃上げの実現』と『格差是正』『労務費を含む価格転嫁の実現』を果たすべく、丁寧な議論を重ねる必要がある」と提言している。
価格転嫁は支払側企業とっては総論賛成・各論反対になりかねず、自主性に委ねては遅々として進まない。価格転嫁促進税制などを設け、価格転嫁に応じた企業にインセンティブをつける施策が必要ではないのか。さらに転嫁額を算出する計算式も政府が提示しないと、要求された転嫁に応じてよいのかどうか、判断の根拠がわからない。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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